第十話 弱さその八
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「御前何か聞いてるか?」
「何でああなったんだ?」
「そのことはな」
龍馬は彼等に難しい顔で答えた。
「俺も聞いたがな」
「それでもか」
「知らないんだな」
「そうなんだな」
「ああ、何か言えないらしいな」
だからだと答えたのだった。
「聞いたんだがな」
「それでもか」
「言えないんだな」
「御前にも」
「そうみたいだな、それだとな」
やはり難しい顔で言う龍馬だった。
「俺もそれ以上は聞けないな」
「まあ無理して聞いてもな」
「それでも言えないこともあるし」
「かえって蓮見傷つけるしな」
「無理に聞くものじゃないな」
「言えない悩みもあるってな」
それこそとだ、龍馬も言う。
「そういうものだしな」
「だからか」
「それでだな」
「御前も聞けないんだな」
「そうなんだな」
「あいつが言える状況になったらな」
その時にというのだ。
「俺が聞くさ、けれどな」
「けれど?」
「けれどって何だ?」
「それが俺にしか言えない様な話だったらな」
ここでだ、龍馬は。
その目を鋭くさせてだ、クラスの男子連中を見据えてからだ。そのうえでこう言ったのだった。
「俺は言わないからな」
「ああ、わかってるさ」
「御前はそうしたこと言う奴じゃないからな」
「秘密だって言われたら言わない」
「約束は守るからな」
「約束を破るなってな」
それこそというのだ。
「祖父ちゃんに言われてるんだよ」
「何か凄い厳しい祖父ちゃんらしいな」
「それもしっかりとした」
「そうした人だってな」
「その祖父ちゃんに言われたからな」
だからというのだ。
「俺は約束は守るからな」
「絶対にか」
「そこは」
「何があってもか」
「ああ、言わないからな」
絶対にというのだ。
「俺もな」
「そうするんだな」
「じゃあそういうことか」
「それならな」
「俺達も聞かないさ」
龍馬が言わないならというのだ。
そしてだ、彼等はこうも言ったのだった。
「とにかくあいつが暗いと気になるんだよ」
「明るくて優しい雰囲気がいいからな」
「あれで結構クラスのムードメーカーだしな」
「気になってるんだよ」
「あいつがまた明るくなるんならな」
「俺達それでいいさ」
こう言うのだった、龍馬はその彼等の言葉も聞いた。だがそうしたことは優花本人には彼を気遣って言わなかった。
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