巻ノ四十一 石田三成その七
[8]前話 [2]次話
「特にです」
「左様ですか」
「そうです、ですから」
「関白様からお誘いを受けましても」
「そのお言葉は有り難いですが」
「わかりました、このことは早馬で関白様にお伝えしますが」
それでもと言った石田だった。
「それがしそのお言葉胸に留めておきます」
「そうして頂けるのですか」
「義ですな」
「そして家もです」
それもというのだ。
「守っていきたいと考えています」
「真田家をですな」
「他には何もいりませぬ」
「ふむ、では奥方は」
石田は幸村に表情を変えずに問うた。
「如何でしょうか」
「そこで欲しくないと言えばです」
「嘘になりますな」
「それがし嘘は嫌いです」
幸村はまた答えた。
「やはり妻は欲しいです」
「左様ですな」
「そう考えております」
「では」
「はい、どなたかおられれば」
「わかりました」
「しかし妻のことでも」
縁組でもというのだ。
「やはりです」
「真田家に留まられますか」
「そうしていきます」
「そうですか」
「何としてもです」
「わかりました、それがしが思いまするに」
石田は瞑目する様にだ、幸村に答えた。
「真田殿は義を歩まれるべきです」
「それがしの思う道を」
「はい」
まさにというのだ。
「そうあるべきです」
「では真田家にもですな」
「留まられるべきです」
「そうですか」
「そのことを強く思いました、ですから」
「このこともですか」
「関白様にお伝えします」
秀吉にというのだ。
「必ず」
「ではお願いします」
「しかし関白様はです」
秀吉のこともだ、石田は幸村に話した。
「優れた者を愛されていて」
「それで、ですな」
「ご自身の家臣にと考えられる方なので」
「だからですな」
「拙者申し上げましても」
それでもというのだ。
「お声をかけられます」
「必ずですな」
「これまでもそうでしたし」
「それで今度も」
「そうなります」
間違いなく、という言葉だった。
「やはり」
「ですな、では」
「お心を貫かれて下さい」
幸村への忠告だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ