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ドラゴンクエストX〜紡がれし三つの刻〜正式メンバー版
二の刻・青年期前半
第二十五話「闘技場にて」
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尻に釘付けになっており、リュカはそれを冷ややかに見つめながら何やらメモを取っている。

「ヘンリー、兎の耳を着けた女性の尻を見ている…と」
「…おいリュカ、何をしているんだ?」
「何、マリアと再会した時の為に少しメモを」
「お、お前と言う奴は…寄越せ!」
「おっと、そうはいかないよ」

メモを奪い取ろうとするヘンリーから逃げようとするリュカだが、その拍子に一人の女性とぶつかってしまう。

「あっ、すみません」
「い、いえ…、お気になさらずに…ぽっ」

ぶつかった女性はリュカの顔を見ると頬を赤らめ、きゃーと走り去って行き、柱の影に隠れるとチラチラと顔を覗かせてリュカを見つめる。

「な、何だあの子は?」
「リュカ、偶然出会った女性に惚れられる…と」
「…何をしているの、ヘンリー?」
「いや、リリスに再会した時の為に少しメモを」
「……」
「……」
「交換しない?」
「交換しよう」

お互いがお互いのメモを受け取り熱い握手を交わす。
熱い友情……なのか?




―◇◆◇―

カジノの中を見回すリュカは其処で地下へと降りる階段を見つけ、其処に取り付けられている闘技場と書かれている看板を見るとその目つきは鋭くなり、それはヘンリーも同様であった。


《闘技場》

捕らえられた魔物をお互いに戦わせ、その勝敗を賭け事にする場所である。
勝敗に関わらずに戦いが終わった魔物は処分され、其処までが見世物なのである。



「殺れーー、そこだーーー!」
「そんな攻撃かわせーー!くそっ、なにやってんだ!」
「てめえには100ゴールド賭けてるんだぞ、負けやがったらただじゃおかねえからな!」
「切れ!噛み付け!炎を吐け!とにかく死ねぇーーー!」

これも人の本性なのであろう、血だらけになりながらも戦い合う魔物達を見ながら叫ぶ者達。
中には賭けをするでも無く、ただ魔物が死ぬ所を見に来た者もいる。

「何と言うか…、さっきリュカがシーザーを懐かせた所を見ただけにこれは…酷いな」
「でも、俺には何も出来ない」

リュカは手すりを握り締めながら呟く。
戦っている魔物達には纏わりつく濁りは見えず、そしてそれは此処にいる魔物達が既に波動に取り込まれた悪意しか持たない魔物である事を意味しており、自分達もこの先の旅の中でそんな魔物を倒さなくてはならないのだ。

「行こう、リュカ」
「うん…」

ヘンリーに促され、狂気とも取れるような叫び声を背にリュカは階段を上がって行く。
魔物の全てが悪い訳では無いと知りつつも彼等を責める事も出来ないままに。

そしてそのままカジノを出ようとした二人の背後から彼等を呼び止める声がする。

「ちょっとお前さん達、少しお待ちでないかい」


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