2部分:第二章
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第二章
「おい、あそこ」
「ああ、やばいな」
川口は洲崎が指差した先を見て顔を強張らせていた。見ればそこではお葬式が行われていた。
「黒い服の連中が一杯いるな」
「それにだ。見ろ」
「・・・・・・いる」
黒い帽子を被った者もいたのだ。
「あれは間違いないぞ」
「黒衣の男だ」
「おい」
今度は川口が洲崎に声をかけた。その強張った顔と声で。
「俺達の方を見ているぞ」
「そうだな。気付いた!?」
「気付いたんじゃない」
川口はそれをすぐに否定した。
「見ているんだ、最初からな」
「最初からか」
「ああ、見ている」
川口のその言葉は確信だった。その葬式の場所を見て言葉を続けていく。
「俺達のことがはっきりわかっているんだ、絶対に」
「逃げるか!?」
「ああ、逃げよう」
ここで顔を見合わせて言い合った。
「だが。そのまま逃げてもすぐに捕まるな」
「じゃあどうするんだ?」
「二手に分かれるぞ」
川口はもう完全に何かの映画の中に入っていた。
「俺は右、御前は左か」
「左右に別れるんだな」
「携帯で連絡を取り合ってな」
「声は出さないでだな」
「当然だ」
話せば話す程勝手にシリアスになっていく。ただしそのシリアスは何かのスパイ映画そっくりであるが勝手に二人の中で盛り上がっている類のものだった。二人は気付いていないが。
「いいな。それでな」
「わかった」
洲崎は川口のその言葉に静かに頷いた。
「じゃあそれで行こう。落ち合う場所は」
「公園だ。そこでな」
「よし。行こう」
「すぐにな」
言葉通り左右に散って小道に入り茂みの中に入ってとにかく普通は通らない道を通って二人は逃げた。時折後ろを見つつだ。彼等は確かに見ていた。
『おい、そっちはどうだ?』
『来ている』
洲崎は林の中をジグザグに進みながら後ろを振り向きつつ川口のメールに返信を送っていた。声を出しては駄目なのでメールでやり取りをしているのだ。
『一人、いや二人いるな』
『二人か、そっちは』
『御前の所は何人だ?』
『三人だ』
川口はこう返信した。商店街の裏側を進む彼もまた後ろを必死に見ていた。
『来ている。間違いない』
『逃げられるか?』
『逃げる』
川口の強い決意だった。
『だから御前も逃げろ。いいな』
『わかった。何とか捲く』
悲壮感漂う洲崎の返信だった。
『何とかな』
『公園で会おう』
川口はこう返信してそれからは必死に商店街の裏側を駆けていった。何とどぶ河にまで降りそこまで駆けた。洲崎は洲崎で山に一旦行ったりした。そうしながら何とか公園まで辿り着いて二人は汗だらけになった顔で再会したのだった。もう必死だったのが嫌になる程わかる。
「逃げられたな」
「何とかな
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