第121話
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ジンの話を聞いたヴァルターは皮肉気に笑った。
「確かにそれは……身勝手な話なのかもしれん。だが、強さを極めるということは突き詰めれば利己的な行為なんだろう。それが、俺たち武術家に課せられた宿命といえるのかもしれない。だからこそ師父は……あえて己の身勝手さをさらけ出した。そうする事で、あんたや俺に武術の光と闇を指し示すために……」
「………………………………」
「……ヴァルター、構えろ。」
自分の推測を聞いて黙っているヴァルターに拳を構えたジンが言った。
「なに……?」
「師父とあんたから学び、遊撃士稼業の中で磨いてきた『泰斗』の全てをこの拳に乗せる。そして、修羅となり闇に堕ちた不甲斐ない兄弟子に活を入れてやる。多分それが、あんたの弟弟子として俺ができる最後の役目のはずだ。」
「………………………………。……ケッ…………ずいぶん吹くじゃねえか…………。だったら俺は、結社で磨いた秘技の全てを拳に込めてやる……。『泰斗』の全てを葬るためにな。」
ジンの説明を聞いたヴァルターは舌打ちをした後、拳を構え、そして
「………………………………」
「………………………………」
2人は身体全体にすざましい気を纏って、睨み合った!
「はあああああああっ……!」
「こおおおおおおおっ……!」
2人がさらに気を練り始めると、空気が大きく震えた!
(す、すごい……)
(このままだと片方は……)
2人の様子をエステル達は驚きながらも見守っていた。
「おおおおおおおおっ!」
「らあああああああっ!」
そして2人の攻撃が同時に交差した!
「………………………………」
「………………………………」
交差した2人はお互いを背を向けた状態で微動だにしなかったが
「…………くっ………………」
ジンが地面に膝をついた!
「あ……」
「ジ、ジンさん!?」
それを見たエステル達は驚き
「ククク…………仕方ねえやつだ……」
ヴァルターはジンの方を振り返り、煙草に火をつけた。
「……それだけの功夫を宝の持ち腐れにしてたとはな……。クク……ジジイの言うことが…………ようやく分かったぜ……。……ふぅ……美味ぇ……。本当に……タバコが………………美味ぇ…………」
そしてヴァルターの手から煙草が落ちると、ヴァルターは地面に倒れて気絶した!
「も、もしかして……」
「うん……ジンさんの勝ちみたいだね。」
それを見たエステル達はジンにかけよった。
「ジンさん………やったわね!」
「お見事です。」
「うんうん!まさか、このとんでもない男に真剣勝負で勝っちゃうなんて!」
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