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浮気の後のラーメン
2部分:第二章
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第二章

「何とまあ」
「驚かれましたか」
「どっきりカメラではないですよね」
 今度はぼけてしまった。そうも思いたくなったのだ。
「それは。その」
「残念ですが違います」
 探偵はまた告げた。
「これは本当のお話です。証拠写真もありますし」
「ですか」
「はい、これです」
 小百合の前に差し出した一枚の写真には確かに恒久がいた。彼はにこやかに隣にいるまるで女の子みたいな感じの奇麗な男の子と一緒にいたのだった。すぐ側にはホテルがあるので何をしに行くのかは一目瞭然であった。それ位は彼女にもわかった。
「これが証拠です」
「男とですか」
「浮気には違いありませんが。如何ですか?」
「何と申し上げていいかわかりません」
 小百合は大きく息を吐き出してから答えた。それが今の彼女の偽らざる心境であった。
「こんなことだとは」
「やはり女の人が相手の浮気だと思われていましたか」
「普通はそうでないのですか?」
 小百合はその問いに逆に問い返した。
「それが。こんなことに」
「普通は浮気が発覚したら離婚だ慰謝料だ喧嘩だとなるものですが」
 それはあくまでその浮気が普通の場合ならばである。普通の浮気でなければ中々そうはならないものなのかも知れない。
「どうされますか?」
「女ならそれを考えていました」
 小百合はまたしても正直に答えた。
「やはり。許せませんから」
「そうですね。あくまで浮気相手が女性なら」
「男の子なら何と言えばいいのか。これも浮気かどうか」
「一応浮気になると思います」
 探偵は言うのだった。結構自信ありげな声であった。
「何回かこういったケースにも遭遇していますし」
「何回もですか」
「ええ、まあ」
 これはこれで驚くべき話であった。こうした同性愛の浮気もままあるということだ。まさに事実は小説より奇なりである。もっとも日本では昔から同性愛は普通なのだが。
「そうした場合皆様奥様と同じ顔を為されますね」
「でしょうね。私もどうするべきか」
 考えかねていた。浮気相手が女なら本気で怒る。しかし男なのだ。自分と同じ性の相手に対する人間特有の嫉妬も憎悪も沸きはしない。狐につままれた感じだ。その感じのまま彼女は考えを混乱させていた。今探偵を前にしてもしきりに首を捻っていたのだ。
「わかりません」
「そこのところはよく御考えになって下さい」
 探偵はそう告げるのだった。
「よく。宜しいですね」
「はあ」
「とりあえず私の仕事はこれまでです」
 探偵は言った。
「そういうことで。宜しく御願いします」
「わかりました。それでは」
 報酬を支払い探偵事務所を後にする。だが小百合はこれからどうするべきか真剣に悩んでいた。とにかくこんな事態は想像だにしていなかったのか。

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