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第一章
浮気の後のラーメン
片岡小百合が自分の夫をおかしいと思い出したのには理由があった。その理由は簡単で夫の帰りが毎晩やけに遅くなったのだ。最初は仕事が忙しくなったのかと思ったがどうやら違うのだ。
まず身なりが急に格好よくなった。それまではとかく服装に無頓着だったのに急に気を使うようになったのだ。
次にダイエットをはじめた。それもかなり真剣にだ。そのせいか数ヶ月したらまるで別人の様に痩せてしまった。それでいて毎晩帰りが遅い。これで変に思わない妻もいないだろう。
「浮気ね」
すぐにそれを予想した。こうした予想はえてして当たるものである。
すぐに探偵を雇って夫の恒久の周りを調べてもらった。すぐにその探偵から報告が来た。
「実はですね」
探偵事務所で話を聞く。探偵事務所は子供の頃読んだ推理小説のそれとは全く違い小さくて殺風景だった。シャーロック=ホームズも少年探偵団もいなければエルキュール=ポワロが座る安楽椅子もなかった。強いて言うならばフィリップ=マーロウのそれに近いだろうか。殺風景な部屋であった。
「申し上げにくいですが」
探偵も映画やドラマに出て来るような探偵ではない。何処か関西の漫才師を思わせるひょうきんそうな顔立ちに痩せた身体をしていてその身体を地味な色のスーツで包んでいる。これでしゃもじを持って喚いているだけが取り柄の何の芸もない小百合が大嫌いな落語家崩れならば仕事を依頼しなかっただろうと心の中で思ったりもしている。その探偵に見えない探偵の話を聞いていた。
「御主人は」
「浮気をしているのですね」
「まあそうなります」
はっきり言えばいいのに何故か歯切れが悪い。小百合はそれをいぶかしんだ。
「何かあるのですか?」
「いえですね」
探偵はその歯切れの悪い返答を続けた。
「そのですね。奥様は浮気についてどう御考えですか?」
ぶしつけに小百合にこう尋ねてきた。
「宜しければお話下さい」
「主人が他の女の人に手を出すことでしょうか」
小百合は少し考えてからこう答えた。
「そうではないのですか?」
「それが違うのです」
探偵はこう述べてきた。
「そのですね。つまり」
「つまり?」
「あれです」
その歯切れの悪い言葉を続ける。顔と同じく言葉遣いも関西の訛りがある。やはり探偵には見えない。
「御主人は浮気をされています。ですが」
「ですが?」
「相手の方は女性ではないのですよ」
「といいますと」
小百合も言葉の意味がわからなかった。
「その。女性ではないとしますね」
「ええ」
やはり言葉の意味がわからない。首を傾げさせもする。
「それですと一つしかありません」
「よくわからないのですが」
本当にわからないの
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