暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十四話 第三次ティアマト会戦(その3)
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
勝てるかだ。

「しかし、元帥も一言こちらに連絡が有って良いだろう。もう少しで負けるのかと思った。そうは思わないか、ケスラー」
「ですが、そのおかげでこちらは必死に敵を押し込みました。敵があれ程両翼を前進させたのもその所為です」

「敵を欺くには、味方からか……」
「はい」
ミューゼル提督は感慨深げに吐いた。その通りだ、敵を欺くには、先ず味方から。私は、いや私たちは敵も味方も全てを欺きつつ戦い続けている。

この戦いが終わったら全てをミューゼル提督に、そして分艦隊司令官達に話さなければならないだろう。これしか方法が無かったと思っている。おそらくミュラー、ロイエンタール、ミッターマイヤーは判ってくれる筈だ。

しかし、ミューゼル提督は到底素直に受け取る事は出来ないだろう。彼の怒りを思うと今から気分が重い。だがやらねばならんだろう。この問題はきちんと説明しておくべきだ。そうでなければ、ミューゼル提督とヴァレンシュタイン中将の間でまたしこりが生じるだろう……。



■ 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ヤン・ウェンリー

状況は良くない。いや、悪くなる一方だ。敵の攻撃は巧妙としか言いようが無い。中央を押し続け、両翼を閉じるような形で攻めてくる。このままだと第三、第九艦隊は第七、第八艦隊の火線上に移動する事になるだろう。

第三、第九艦隊にはそのことを注意しているのだが、敵の攻撃が強力で巧妙なためどうしても内側に押されてしまうのだ。どうにかしないと、第三、第九が潰された後、第七、第八が潰されるだろう。あるいは一気に包囲殲滅を狙ってくるかもしれない。

「第三、第九艦隊は何をしているのだ、あれでは第七、第八の邪魔になるだけではないか」
ドーソン司令長官が怒声を上げる。しかし誰も答えることが出来ない。

皆、表情が暗い。判っているのだ、今の第三、第九艦隊には敵の攻撃を防ぐ手段が無い。そして終焉が迫っている事もわかっている……。一つだけ対策がある。しかし危険が大きい。場合によっては全軍崩壊になるかもしれない……。

「ドーソン提督」
「なんだね、ヤン准将」
普段は碌に見向きもしないのに、縋る様に視線を向けてくる。こんな時だが可笑しくなった。

「場所を交換しましょう」
「?」
「第三、第九を中央に置きましょう。代わりに第七、第八を両翼に配置します」

「! 馬鹿な、何を言っている」
「非常識な案だとはわかっています。しかし、第三、第九は元の位置に戻ろうとして外側から攻撃を受け損害を出しています。積極的に内側へ後退すれば損害は少なくて済みます」
「……」

「第七、第八を代わりに両翼に配置し、敵のさらに外側から攻撃させるのです。今度はこちらが敵を包囲できます。敵の攻勢を止められるでしょう」
そう、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ