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第九話 エル・ファシルの英雄は誕生する・・・のです???
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将の脱出艦と反対方向に飛ばしてくるころあいだ。
数日前――。
俺はヤンの策略を自分が考えたかのように事前にシュタインメッツにいい、シュタインメッツは大いにその通りですと感嘆の目をした後、それを艦隊司令官に具申した。司令官はマーロイド・フォン・シャフツベリー中将。貴族の男爵だ。原作にはいなかった。モブキャラだろう。一応軍歴は長いらしいが、まぁ、ボンボンだな。
「閣下、注意すべきはあの星の民間人の脱出でしょう」
「脱出?」
シュタインメッツから、意外なことを聞いたかのように、司令官が目を開く。
「バカなことを。エル・ファシルに逃げ込んだ艦はたった200隻程度ではないか。民間船を脱出させるには相当の護衛が必要だ。護衛なしで脱出するのは自殺行為だろう」
こいつはバカなのか?いや、原作の知識があるから、俺がそう思うだけなのかもしれないが。
「ですから、一部囮をはなつのではないかと思います」
俺はたまりかねて口を出したので、司令官はびっくりした顔をしている。本来なら従卒風情が司令官に話しかけることはできないからだ。だが、俺は公爵家の跡取り。それを思い出したのか、司令官はどなりつけそうな顔をひっこめた。
「囮とは?」
「はい。エル・ファシル本星の近くには、恒星があります。通常の民間船の速度では脱出したところですぐにわが方に追いつかれてしまいますが、恒星風の勢いに乗れば加速は可能です。囮が少数の艦でこちらの敵中を斜めにかすめるようにして離脱する間に、悠々と脱出できます」
おお〜というどよめきが起こる。どの顔も信じられないと言った顔をしている。まぁ、幼年学校の従卒がそのことを口に出すことが信じられないのだろう。まだ一発の弾も討っていないような少年が。
「であれば、こちらは太陽風の吹き始めに到達するまでの地点に艦船を配置して包囲網を作っておけば良いのです」
最後には司令官も納得顔だった。ま、民間船の脱出だ。戦闘と違う。危険もない。捕虜を取ればプラスにこそなれ、マイナスにはならない。そんな判断が働いたのだろう。俺の策をとると言ってきた。ま、最終的にはあの司令官の手柄にはなるだろうが、俺は献策したという実績は残る。今回はそれでよしとしよう。
「閣下、敵艦がエル・ファシル本星を離脱!!」
回想から目が覚めた。参謀が叫んでいる。敵の艦が包囲網の一画の手薄なところを斜めにかすめるようにして脱出しようとしている。俺のよみがあたったわけだ。司令官の俺を見る目は変わった。
「前衛艦隊はあの艦を追え!そのほかの艦は所定の位置に移動して敵の民間船を待ち伏せせよ」
司令官の号令一下、艦隊の一部はこの囮艦を追うべく動き始め、他の艦も追随を始める。だが、それは擬態で、すぐに航路を
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