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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 14
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は、彼が確認した後だ。
 「何かあったんですか?」
 「はい。先日、ミートリッテさんとハウィスさんのお宅へ伺う前に女神像と祭壇の清掃をしていたのですが、その時には指輪が一つ付いていました。大きさからして女性物だったと思いますが……おかしいですね。教会を離れる際には全部屋戸締まりしておきましたし、荒らされた形跡も無かったのに、指輪だけが綺麗に消えているなんて」
 昨日の夕方以降今朝までに、鎖を残して指輪だけが忽然と消えた。礼拝堂も関係者用の部屋も荒らされず「指輪だけ」が? それではまるで……と、嫌な考えが脳裏を掠める。
 「神父様が掛け直した時や私が外した時に落としてしまった可能性も、絶対に無いとは言い切れませんよね? 掃除しながら探してみます。指輪の特徴を教えてください」
 礼拝堂の掃除はまだ右半分が残っている。ミートリッテが落としたとは考えられないが、アーレストが落とした可能性は否定できない。寧ろそうであって欲しいと、冷静な態度の裏に必死で焦りを隠した。
 「細い銀の輪に、丸くて青い宝石が付いていました。大きさは……失礼します」
 彼の人差し指がミートリッテの右手を掬い上げ、四本の指先を親指がなぞる。
 一瞬ぎょっとしたが、直ぐに指輪の大きさを目測していると解ったので、殴りたい衝動は芽を出さなかった。
 「……多分、ミートリッテさんの中指くらいです。凝った意匠は感じられませんが、とても繊細な印象を受けました。私も、此方の掃除が終わったら一緒に探してみます。来ていただいたばかりの貴女にお任せするのは、さすがに心苦しいので」
 「はい。ではまた、後ほど」
 指輪の存在は共に認識した。一先ず実物に触れれば、後は偽物を作ってすり替えるだけ。なら、実物を探し出すのに彼を拒絶する理由は無い。
 急ぎ掃除を再開し……やがて、アーレストと何故か女衆まで加わった大捜索は、昼過ぎまで休まず続けられた。
 だが、花瓶や椅子や絨毯をひっくり返しても、壁や床を舐めるように這い回っても、やはり指輪は見付からなかった。
 女衆の囁き声で賑わう礼拝堂を茫然と見渡していたミートリッテは、最悪の展開を確信する。
 指輪は紛失したんじゃない。
 何者かに奪われたのだ、と。



 『誰が指輪を奪ったのか』
 アーレストに書庫兼執務室へ無理矢理押し込められてからずっと、そればかりが頭の中でグルグル回る。
 海賊共が隙を見て奪ったのならまだ良い。それならそれで連絡の一つでも寄越しやがれ! と怒るだけで済む。昨晩は気絶させられてたし、或いは拉致しようにも自警団員が彷徨いてて難しかったのかも知れないが、始終見張ってるなら方法なんて幾らでもあった筈だ。指輪入手に拘ってシャムロックを放置とかなら、次に会った時は最早殺人も厭うまい。我が身を棄ててでも全員成敗してや
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