Side Story
少女怪盗と仮面の神父 14
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祭壇の両脇にはそれぞれ、関係者以外立ち入り禁止の札が掲げられた飴色の扉がある。
左側の扉を開くと、正面に狭く短い廊下、突き当たりに嵌め殺しの小窓、右一面に壁、左に二つの部屋が並んでおり、奥の部屋へ入ると調理兼食事用の設備が、手前の部屋へ入ると祭事や掃除等に使われる道具が丁寧に収納されていた。
右側の扉も左側と同様で、正面に狭く短い廊下、突き当たりに嵌め殺しの小窓、左一面が壁、右に部屋が二つ並んでいる。此方の奥の部屋は空間三分の一ほどに扉付きの壁を挟んで浴槽等身支度用の水回りを完備した寝室、手前の部屋は書庫兼執務室になっていた。どの部屋も大体同じ大きさで、一人か二人の共同生活が精一杯と思われる。
この教会の担当者が少ないのは、居住空間の狭さも関係してるんじゃないか？ ただでさえ住み難い環境下にあるんだから、もうちょっと過ごしやすく広くしたほうが良いのでは……と、ミートリッテも初見では暢気に思案していた。
が、今はそれどころではない。
眩しい陽光が水平線へ下り始め、青い空を徐々に染め変えていく時間の書庫兼執務室。
細やかな小窓を無視して壁三方全面にびっしり並べられた書棚と、机からはみ出して床さえもほぼ隙間無く埋め尽くす山と積まれた教材に囲まれ、彼女はひたすら無言で教本の書き取り作業をしている。
女神アリアがこの世界に何を想い、何をしたのか。
一存在の心の内と考えれば不自然なくらい克明に記された文字の列を目で追い、インクを付けたペン先でまっさらな紙面に黒い線を素早く、且つ誤り無く刻んでいく。
けれど。
どれだけ同じ文章を目に映し、自らの手で正確に書きなぞっていても、それらが彼女の記憶に留まる事はない。
何故なら、肝心なミートリッテの思考が、焦りと怒りと悲しみと戸惑いと……ありとあらゆる負の感情の渦に呑まれているから。
「ミートリッテさん。そろそろお休みを入れませんか？」
陶製の白いカップに甘い花の香りがするお茶を淹れて持って来たアーレストにも、全く反応しない。
いや、できない。
寄せた眉と引き結んだ唇が泣き出しそうな表情を彩っているのに、指先は止まる気配を見せず黙々と文字を書き続ける。
そんな彼女を部屋と廊下の境目で立ったままじっと見守るアーレストの耳には、カリカリ、カリカリと硬質な音だけが虚しく響いていた。
アーレストから鍵を預かったミートリッテは、予想通り礼拝堂で控えていた女衆の冷たい目線に気付かない振りをして、とりあえず教会内を一通り観察した。
次に道具部屋へ行き、用意したのは古い布切れや箒や塵取りやバケツ等の掃除道具一式。
持参したバッグに紛れ込ませておいた、家で常用している白無地のエプロンを装着し、礼拝堂の目立たない所から順に掃除を始める。
真ん中の通路を境に左
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