第1話Bパート
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逃げ出した。
「一番薄いのがオリジナル。おそらくあいつがそうよ」
「なら、急いで倒さないと!」
「ええ。……っ!まだ私は動けそうにないわ。あなた一人で追って頂戴」
「これが最後ですからね」
倒れたままの女を残し、怪物を追い始める門司。
途中後ろから、「最後の切り札は『9』」と聞こえたので門司は9、9と唱えながら走った。
門司が怪物に追いつくのにそこまで時間はかからなかった。
河川敷を逃げる怪物に後ろから飛びかかり、はね退けられつつも歩みを止めることに成功した。
互いに起き上がり、対峙する門司と怪物。
しかし、ここで門司の思いもよらない事態が起こった。
「おいおい!そんなにひっぱるなよドグ!……うわああああ!?」
子犬をリードで連れた小学生ぐらいの子供が門司の後ろから出てきて怪物の前に飛び出したのだ。
(なんでよりにもよってこんな時に!)
「ド……ドグぅ」
震えながら小さく吠える犬と、立ちすくむ子供。
そして、彼らの目の前に立ち塞がる怪物。その歪な形の手は容赦なく振り下ろされた。
「おおおおお、おかあさーん!」
大声で叫んだ直後、自分の体が何ともないことに気づくと、少年はゆっくりその瞼を開いた。
彼は目の前で、見たこともない姿をした人が怪物の腕を掴んで制止しているのを目撃した。
直後、その人物は横に弾かれた。しかし、目の前に現れた『ヒーロー』によって彼の恐怖は期待と興奮へと徐々に塗り替えられようとしていた。
(なんでだろうな……もう二度と、自分の意思以外で人と関わらないはずだったのに)
だが、門司が目の前の子供を庇ったのは事実としてそこにあった。
本来なら剣で受け止めるべきだったのだろうが、確実に怪物の腕を止められるか絶妙な間合いだったので仕方なく右手で止めるしかなかったのだ。
しかし、やはり素手。先ほどと同じようにあっさりと押し返されて弾き飛ばされてしまった。
「ぐおっ。やはり無理があったか。……しまった」
反撃を受けた拍子に剣を離してしまったらしく、かなり遠いところまで飛んでいた。
門司は剣を取りに行こうとしたが、怪物は容赦なく連続で蔓を叩きつけてくる。
「がっ……うあっ……」
「ががが頑張れ!はやくそいつをや、やっつけてよ!」
お構いもなく子供の声が後ろから聞こえる。
(何をやっているんだ俺は……あの子供に気にせず普通に切り込んでいれば怪物も倒せて全てが終わっていたはずなのに)
怪物の執拗な追い討ちの中で、門司の意識は少しずつ遠のいていった……。
遠ざかる意識の中で、浮かび上がってきたのはかつての学園祭での姿だった。
(当時の俺は自分の書いた脚本の舞台で仮面を被った謎の怪人の役を演じていた。あの時の俺は舞台の上とはいえ、何も気にせ
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