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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十三話 第三次ティアマト会戦(その2)
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嫌な予感がする。胸中にどす黒い不安が渦巻く。偶然だろうか、それともこれまでの混乱は擬態だったのか……。弱気になるな、敵の中央があれだけ攻撃を集中しているのは、両翼が当てにならないからだ、そのはずだ……。
「敵別働隊、外側より接近中!」
「第三分艦隊に迎撃させよ」
これまで動きの無かった敵の分艦隊が動き出した。やはり擬態だったのか……。
艦橋の雰囲気が先程とは一変している。参謀もオペレータも不安そうな表情で周囲を見渡す。いかんな、落ち着かせなくては。
「何を慌てる事がある。最後の足掻きだ、落ち着け!」
迷うな、此処まで攻め込んだのだ。敵の別働隊は第三分艦隊に防がせる。敵に比べれば兵力は少ないが、防ぐだけなら大丈夫だろう。その間に正面を突破し敵の後背に出る。司令部の作戦は間違っていない。此処で攻め切れば良いのだ。
「敵別働隊、第三分艦隊と接触します」
どうやら落ち着いたようだ。大丈夫だ、我々は勝っている。
「正面の敵に攻撃を集中せよ。突破して敵の後背に出るぞ、それで我々の勝ちだ」
「だ、第三分艦隊押されています!」
落ち着いたと思ったのもつかの間だった。敵の別働隊は圧倒的な勢いで第三分艦隊を攻撃している。このままでは突破されるのも時間の問題だろう。
どうする? 増援を出すか? しかしそれでは正面の敵を防げない。なし崩しに後退せざるを得ないだろう。第三分艦隊も増援に出した部隊も敵中に孤立しかねない。
「正面の敵、接近してきます!」
■ 同盟軍宇宙艦隊総旗艦ラクシュミ ヤン・ウェンリー
「敵左翼、右翼、反撃してきます!」
「外側から別働隊が接近中!」
「中央の敵、攻撃を強めつつあります!」
戦況は一変した。オペレータ達の報告に緊張感が走る。ドーソン提督も顔面を引き攣らせ敵の動きを注視している。敵の両翼が反撃してきたのだ。これまで戦闘に参加していなかった艦隊が攻撃に参加しだした。やはり擬態だったか……。
第三、第九艦隊は別働隊に対応するべく分艦隊を振り向けた。大丈夫だろうかと思う間も無く圧倒的な勢いで敵に粉砕されつつある。やはりそういうことか……。あの艦隊が後方で待機していたのはこのために用意された艦隊だったのだ。攻撃専用の艦隊、それにしてもとんでもない勢いだ。
「ドーソン提督、第三、第九艦隊を後退させて下さい」
「何を言う。今後退させたら、敵の攻勢を助長させるようなものではないか」
「このままでは、敵の別働隊に側面を突かれます。正面の敵と連動されたら壊滅しかねません。それよりは多少の出血を覚悟の上で後退し、艦隊を再編するべきです」
私とドーソン提督の遣り取りに艦橋は沈黙に包まれた。わかっている、言うのは容易い。しかし実行するのは至難の業だ。損害も
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