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もう一つ、運命があったなら。
分岐点
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 燃え盛る炎の中、俺は何が起こったのかよく分からなかった。

 自分の目の前で、父親と母親が崩落した家に潰された。

 どう考えたって、助かるはずがないのは子供の頭でも理解できた。

 二人を確認しようにも、炎の壁が目の前に立ち塞がり向こう側へは行くことが出来なかった。

 呆然と立ち尽くし、辺りを見渡す。

 どこを見ても、火、火、火。

 360度、自分の背丈を優に超える炎に囲まれ、誰かに助けを求めようともどこにも人影は見当たらない。

 自分の家の隣にあった家の玄関に、数分前まではヒトだったものが転がっているのを見たくらいで、他には何も誰もいなかった。

 当てもなく、その足を動かして何も考えずにただ歩き出した。

 そうするのが、人間の本能だったのだ。

 生きるためには、ここにいてはいけないと本能で悟った。

 震える足で、息が出来なくて苦しいけれど生を求めてあるいた。

 自分の家があった住宅地を抜けた辺りで、急に人の気配がするようになった。

 崩れた家の中から叫ぶ人の声が聴こえるようになったのだ。

 『助けてくれ』、『誰かいるのなら出してくれ』、『子供だけでもお願いだ』、『熱い』、『苦しい』

 『シニタクナイ』

 耳を塞いで、その叫びを聴こえないようにして俺は歩いた。
 
 途中、顔の皮膚が爛れ、右腕が肘から千切れている男の人が無事な自分を見て助けを求めてきた。

 息が出来ないんだ、と潰れた苺みたいな鼻を見せられた。

 正直、それが本当に自分と同じ人間だと思うことが出来ず、怖くなってその場から去った。

 男の人は、追いかけてはこなかった。

 上半身だけが外に出て、足が挟まれている人も何人か見た。

 どうにかすれば外に出ることくらいは可能な人を。

 けれど、子供の俺に何ができる。

 重い建物をこの小さな手で動かすことなんて出来るはずがない。

 そう思って、何も見ていないフリをして出来るだけ火が少ない場所を選んで歩いた。

 必死に生きようとしている人たちを見て、その声も聴こえているのに。

 ただ、自分だけが助かるためにその全てを無かったことにした。

 そんなものは、幼い頃の自分には考えることは出来なかったけれど、間違いなくその選択を選んだのは俺だったんだ。

 逃げても、逃げても、死は追いかけてくる。

 お化けが怖くて母親に泣きついた記憶も、床に積もった埃と同じくらい薄く思えた。

 それでも歩いて自分の生を探し、生き延びようと息を吸った。

 熱い空気が喉に張り付き、身体の中に入って行かない。

 苦しい、熱い、怖い、痛い。

 時折、瓦礫に足を取られて転んだ。

 それでも
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