近づく運命
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。うん、こういう穏やかな日々がいつまでも続けばいいのに。綾ねえとかいうモンスターが居なければもっと落ち着くのだけど。
「先輩、今日の放課後はバイトですか?」
「いや、今日は何もないよ。澪は部活?」
「はい。とは言っても発表会も終わってしまったのでほとんど活動はないんですけどね」
「ああ、そういやこの前の大会で銀賞を取ったんだよなうちの吹奏楽部。大したもんだ」
年明けに澪が所属する吹奏楽部のコンクールを俺と綾ねえで見に行ったのを思い出す。
音楽には疎いのでよく分からなかったが、実際に聴いてみたら結構面白いものだった。迫力もあって、その一曲にどれだけの時間や想いをかけてきたのかがひしひしと伝わってくるようで感動してしまったのをよく覚えている。
「先輩たちが頑張ってくれましたから、努力が実ってよかったです」
「だな、美綴とか陸上部なんじゃないかってくらい走ってたし」
「部長は特に頑張ってくれました。優秀賞をもらうのも納得です」
「あれ、澪も優秀指揮者賞もらってたじゃん。゙一年生の天才美少女指揮者・間桐澪!゙だっけか」
学校の掲示板に張ってあったのが記憶に新しい。そこから学校内で澪の株が急上昇したのは言うまでもなく、知り合いである俺に紹介してくれと寄って来る男子が鬱陶しかった。
澪はそういうちやほやされるのが好きではないので丁重に断らせてもらったが、その代わりに違う女の子を紹介するのが凄く手間取った。仕方ないよな、頼ってきた人を無下にはできない。
「あ、あれは新聞部の先輩が勝手に書いたもので!」
「分かってるよ。でも、凄いよなぁ。さすが、俺の後輩だ。よしよし」
「……空也先輩、ずるいです」
恥ずかしそうに頬を赤らめる澪の頭を撫でてやる。
偉そうなことを言ったけれど俺なんかより澪の方がよっぽど優秀だし、良い人間性を持っているのは明白だ。後輩の女の子に負ける先輩、何だろう、凄くみっともない。
たわいのない会話をしながら学校に行くまでのゆったりとした時間を過ごし、今日も間違いなく今日なのだと思い知らされる。
何も変わらない、ただそこに訪れることが確定しているのがこの日常であり、それはきっと俺にとって大切なものであることは心の隅で思っている。
たとえ、飛行機が通った後にできる飛行機雲のような当たり前で短い日々だとしても、いつか思い返せばその記憶の俺はいつだって笑っていると信じられる。
『次のニュースです』
ただ、いま一つだけ思うのは。
確定した今日も、明日も、この世のどこにも存在しないということ。
『昨夜未明、新都にあるオフィスビルでガス漏れ事故が起き、当時ビル内にいた十数名が意識を失い都内の病院に救急搬送され
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