同じようで何かが違う朝
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に立つのかどうかは微妙だ。履歴書の特技の欄に゙狸寝入り゙なんて書かれていたら俺が面接官なら本人を見る前に落とす自信がある。
「…………」
「やっぱり寝てる。どうしよう、朝ごはん作れないよぉ」
引き続き頬をぐにぐにされるが起きるつもりはない。はは、甘いぞ。そんなに俺を起こしたければ爆弾でも持ってくるんだな。
うーん、と悩む声を近くで聴きながら寝たフリを続ける。しかし、執拗に顔を触られているので寝つけようにも寝つけない。
とりあえず諦めるまで我慢するか。そう決めて成されるがまま時間は過ぎていく。
「……起きない。よーし、なら」
やっと頬から指が離され、地味な喧しさから解放された。よし、これで本格的な二度寝に入れそうだ。
しかしそう思った矢先、横を向いて寝ている俺の目の前に誰かが寝転がった気配がした。
「よい、しょっと。……えへへ、先輩の隣〜」
さっきよりもっと近いところから声が聴こえる。いやいや、これは近いなんてもんじゃない。顔に息がかかってるし、甘い良い匂いが鼻に入ってくる。
やばい、今すぐ目の前に広がる状況を確認したい。でも寝たい。
欲望の指針がどっちにも振れなくなってきた。どうしよう、この状態を維持し続けてしまったらいつまでも眠れないし起きられない。
「せんぱーい。ふふ、可愛い寝顔」
くっ、なんだこのときめきは。まるで自分の知らないところでされている賞賛を偶然聴いてしまった時のような感覚だ。
動悸が激しさを増し、体温も上がっていくのが分かる。だがここで乱れるほど俺の精神力はやわではない。心を静めろ。邪なものは何も考えてはいけない。
「もうちょっと近づいても、いいよね」
さらに身体が近づいてくるのがわかり、その存在を強く感じることができる。既に俺の意識は覚醒してしまい、まずもって寝れる状況ではなくなってしまった。
目を開けるべきか、諦めるまで狸寝入りをするか。究極の選択がここに生まれる。トゥビー? オア、ノットトゥビー?
このままじゃ寝るか起きるかの問題ではなく、俺の理性が耐えられるか耐えられないかの話になってしまう。
こんな朝に後輩を襲ってしまったなんて事実が公になれば俺は十七歳という年齢で鉄格子の中に放り込まれ冷たい飯を食うことになるだろう。それはいかん。断じていかん。
「…………ばれなければ、ちゅーしちゃってもいい、かな」
耳を疑うセリフが腐りかけた脳内に侵入し、理性の防護壁を瞬く間に打ち壊していく。心のベルは警鐘を鳴らし、赤いランプが絶え間なく光り続け限界がもうすぐ来ることを知らせる。
心臓の鼓動は外に漏れているのではないかとい
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