4部分:第四章
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第四章
「なったのですか」
「一年の終わりです」
パヴァロッティ神父はその彼に対して答えてきた。
「その時に百八の煩悩を払うのです」
「心の中の苦しみをですか」
「そうです」
ゴンザレス神父も煩悩のことは知っていた。おおむねこう認識していた。それをパヴァロッティ神父は答えてみせたのである。二人の息が夜の闇の中で白い。
「その通りです」
「それは仏教ですね」
「はい、仰る通りです」
「間違いなく。しかし」
ここでまた言うゴンザレス神父だった。
「何が何なのかわかりません」
「急に仏教になったことがですね」
「先日まであれ程神と主と聖霊を讃えていたのに」
こう言って戸惑うことしきりだった。
「何故こうなるのか」
「それではですね」
「それでは?」
「明日ですが」
彼から話を進めてきた。
「明日のことですが」
「どうだというのですか?」
「また外に出ましょう」
こう彼に言ってきたのである。
「明日です」
「そうですか。明日ですか」
「そう、明日です」
また言うパヴァロッティ神父だった。
「明日また」
「わかりました」
話が全くわからなかったがその言葉に頷くのであった。
「明日ですね」
「今日はもう帰って寝ましょう」
「ええ、そうですね。何かさっぱりわかりませんが」
「また明日です」
一年の最後の日はこれで終わりであった。そしてその次の日、一年のあらたなはじまりの日はである。外に出て向かった場所はである。
「ここは?」
「御存知ですね」
「神社ですね」
まずはこう返したゴンザレス神父だった。二人は神父の黒い服のままである。
「ここは」
「はい、そうです」
「住吉大社ですか」
その神社の名前も知っていた。その広さはかなりのものである。普段は静かな場所だがこの日だけは違っていた。至るところ人だらけで神社の外まで人だかりでごった返している。ッ二人も神父もその中にいた。ここでゴンザレス神父は驚く顔で言うのであった。
「昨日は仏教でしたね」
「そうでしたね」
「それで今日は神道ですか」
「それがどうかしましたか?」
「どうかしましたかではありませんよ」
ゴンザレス神父は首を傾げながら述べた。
「こんな滅茶苦茶な世界がありますか」
「信仰がですか」
「そうです。まずクリスマスまでは神の世界で」
「はい」
「しかし一年の最後は仏教で」
つい昨日の話である。
「そして今は神道だとは」
「それがどうかしましたか?」
「日本人の信仰はどうなっているのですか」
このことが不思議でならないのである。
「全くどうなっているのですか」
「見たままです」
しかしパヴァロッティ神父は穏やかな顔で言う。熱いまでの人高りの中でだ。
「こう
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