第二十話 もう一つの帝国の姿
[4/5]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
ファルマート大陸全土を支配するだけの影響力があったのは事実だ。そんな大国のプライドを持った人間がいきなり敵国の人間に対して内心で認めると思うか?」
「現実が分かる貴族ならともかく、国粋主義者や主戦派は認めないと?」
「情報省は、そう予想している。帝国との戦争が終われば日本とアカツキ帝国で捕らえた帝国の捕虜は引き渡す事になっている。こっちは少数の捕虜だけだが、日本は大勢の捕虜を捕らえている。特に貴族出身者は多いらしい。それだけに、戦争が終わっても現政権に不満があって第二のクーデターが起きる可能性がある」
黒田から説明を受けて島田はいまだに疑問が残る。どうしてただの一介の大尉に過ぎない俺にこんな情報を教えるのかと……。
そんな島田の考えた事に対して黒田はニヤリとした表情で答える。
「特殊作戦群第三課に所属していたお前が、ただの大尉な訳あるか」
「好きで入ったわけじゃありませんよ」
特殊作戦群第三課は対テロ部隊である。表向きはテロリズムを最小限の被害で抑えるように設立された課であると世間には知られているが、裏では非公式にテロリストの重鎮や敵国の貴族や王族を拉致して、時には暗殺もする程であり、そのため特殊作戦群の中でも特に選りすぐりの精鋭が揃う事で有名であった。
黒田は特殊作戦群参三課に所属する大佐である。島田は今でこそ特殊作戦群の所属ではないが、黒田は島田が特殊作戦群第三課に所属していた時の上官であり、あらゆる暗殺や拉致といった殺しや拷問の数々を教えこまれたのである。非公式ではあるが、そのような汚れ仕事に島田は参加もしている。
「お前は偶然にもピニャ殿下と知り合うきっかけを作った。そのためこれからも護衛目的で接触する機会は増える。終戦後は、ピニャ殿下に不満を持つ反対勢力に対する対処と、自衛隊の伊丹二等陸尉に対する警戒だ。」
「伊丹二尉に?」
何でそこで伊丹が関わるのか疑問を口にする島田。
「あの男は危険すぎるからだ」
「あいつは自他共に認める趣味を優先する怠け者ですよ。」
自衛隊との交流で伊丹に対する島田の評価であった。実際に伊丹自身かたも伊丹の上司だった自衛官からも、怠け者の評価を下しているからである。
「どうして伊丹二尉が危険か?第一陣の日本国の外交官との接触での対応で、あまりにもこっちの動きを知り尽くしているように動いていたからだ。実際に外務省の人間は、こんなに早くも対応する日本の外交官に不思議に思っていた。それで調べてみたら、日本の外交官と自衛隊から派遣された武官に絡んでいたのが、伊丹二等陸尉というわけだ。」
「まさか……」
「事実だ。今回のアカツキ帝国訪問に対しても本来なら伊丹二等陸尉は同行する事はなかったが、日本の外交官が、どうしてもと伊丹二尉の同行を
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ