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第一章
悔いあらためよ
ゴンザレス神父は日本に来ていた。それは仕事のうえで、である。
まだ若く整った顔立ちをしている。黒い太い眉にダークブラウンの髪に高い鼻と彫のあり顔をしていて黒い目の光も強い。口元は引き締まっている。
背は高く均整のとれた体格をしている。姿勢もよく神父の服がよく似合っている。性格は至って真面目で熱心である。信仰心も学識も確かである。
彼は日本に来てだ。まず思ったことはだ。
「凄い国ですね」
「凄いですか」
「全くです」
こう同僚のパヴァロッティ神父に対して言うのである。その髭だらけの彼の顔を見ながらだ。この神父はゴンザレス神父と正反対に丸々と太って人なつっこい顔をしている中年の男である。
「いや、話には聞いていました」
「独自の文化を持っている国だと」
「箸ですか」
日本人が使うその食器のことだ。
「あの二本の棒を使って食べるのはです」
「もう慣れましたか?」
「赴任する前に練習をしていましたので」
真面目な彼らしい行動である。実際にそうしたのである。
「それでなのですが」
「それでもですか」
「その箸で色々なものを食べるのですね」
ゴンザレス神父が言うのはこのことだった。
「本当に。この前レストランで」
「どうされました?」
「スパゲティをです。その箸で食べている人がいました」
いぶかしむ顔でパヴァロッティ神父に話す。
「普通はフォークですが」
「はい、それはその通りです」
パヴァロッティ神父もそのことに頷く。実際に今二人は自分達で作ったスパゲティを食べている。トマトと大蒜、それにシーフードのスパゲティである。当然オリーブはかなり使っている。
「現にこうして我々も」
「ですが箸で食べていたのです」
「それも日本の醤油や独自の食材を使ったスパゲティをですね」
「信じられません」
こう言うしかないゴンザレス神父だった。
「そんなパスタがありその食べ方も」
「ですから日本ですので」
「日本だからです」
「この国が独特なのはもう御存知の筈ですが」
「ええ、それは」
先の話の通りである。
「その通りですが」
「ではそういうことで」
「ううむ、しかし」
「やはり納得できませんか」
「正直に申し上げますと」
ゴンザレス神父は嘘をつくことが嫌いだった。何故かというと彼は神に仕えていると自覚しているからである。神の僕が嘘をついてはならないということだ。
「その通りです」
「そうですか。やはり」
「どうしても抵抗があります」
また言う彼だった。
「この国には」
「ははは、すぐに慣れます」
パヴァロッティ神父は笑ってそのことを否定した。
「すぐにです」
「慣れますか」
「は
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