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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十二話 向き合う覚悟、失う覚悟
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表に出して、良いことなど無かったからだ。一年間ともう半年近い現実世界での生活の中で、気が緩み始めているのか……あるいは単に、感情の制御がへたくそになっただけか……どちらかはわからなかったが、涼人個人としてはあまり感情を他人に読み取られて気持ちの良いものではない、余計なことまで察されてしまうのは、勘弁願いたかった。

「……こういうこと言うのはあれだけどさ……いいんじゃないか別に、腑抜けたって」
「あん?」
「少なくともこういうことではさ、一緒に暮らしてて様子がおかしいって気が付くとか、そんな当たり前のことにまで気を張ることないと思うんだよな……」
「それくらい……わかっちゃ居るつもりなんだがな……」
ここはSAOではない、世界的にも治安が良いことで有名な国家、日本だ。明日、明後日命を落とすかもしれなかった、あの世界とは何もかもが違う。
だが、涼人や和人はあの二年間をずっとそう言う環境で生きてきたのだ、そして同時に、現実世界(こちら)に帰ってきてすら、時折顔をのぞかせるそういう環境と戦ってきた。つい最近にすら、死銃事件(あんなこと)があったし、今回だって、人の命がかかわっている。

「そういう基準で、物事の危うさとか、怖さとか、そういうことを考える兄貴が間違ってるって言うつもりはないさ……いや、言えないんだ。兄貴がアスナと何を話したのかは、俺にもなんとなくわかるし、それは俺が、どこかで、“そういう基準”で物事を考えてるからだから」
「…………」
「だから、申し訳ないとも思ってる、ホントなら、兄貴の言葉は俺がアスナに伝えるべきだったんだろうと思うからさ……」
少しくらい声音でそんなことを言う和人に、涼人は肩をすくめる

「嫁さん想いのお前じゃ無理だと思うがな、それに俺は俺が思ったこと言っただけだ、少なくとも、そこに後悔してるわけじゃねぇ……」
「なら、兄貴が悩んでるのはどこなんだ?」
少し面白がるようなその言葉に、涼人は苦虫をかみつぶしたような、微妙な表情をした。きっと和人には、答えが分かっているのだ。

「……言い方とか、タイミングとか、色々間が悪かったっつーか……つまり、なんだ……」
「明日奈の気持ちに無頓着過ぎた」
「……ちっ、分かってんなら一々言わせんじゃねぇよ」
めんどくせぇ奴だな、などと言って、頭を掻く彼を見て、和人は苦笑した。

「嫁さん想いの、なんていうけど……兄貴だって大概だと思うぞ、この義妹想い……「うるっせぇ」いてっ」
ごすっ、と頭を小突かれて、言葉を強制的に切らされた和人は不服そうにしたが、すぐに思いついたようにその顔をニヤッとした笑顔に変えた。

「照れてるのか?」
「はっはっは、減らねぇ口だなぁオイ」
顔をひきつらせながらにじみ出る不満と笑顔を和人にぶつけて、涼人は憮然とした態度
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