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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十二話 向き合う覚悟、失う覚悟
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奈……」
「あの世界の時間があったから、私、今私として生き方を選ほうとしてる。結城京子の娘としてじゃなくて、結城明日奈としての、私の生き方を……やっと、ちゃんと選べそうなの……だから、ありがとう、兄さん……私に、切符をくれて」
あの世界で《閃光》と呼ばれた、その彼女と同じ、強い意志を持つ瞳で、明日奈は浩一郎を見ていた。いつの間にか家の前につき、ゆっくりとスピードを落として止まった車の中で、明日奈は浩一郎と目を合わせる。
やがて彼はくしゃっと笑みを浮かべると、困ったように言った。

「……お前は昔から強い強いと思ってたけど……いつの間にか、ホントに強くなったな」
「そう……かな?」
「うん……今なら、母さんにもきっとお前の言葉が届く、そう思わせてくれるよ……俺は、少ししてから家に帰ろう……その間に、一対一で話してくると良い」
「あ……うんっ」
あえて家の中を二人だけにすることで話し合う場を作ってくれる。その行動に背を押されていることを感じて、明日奈は強くうなづいた。

「後悔しないように……伝えたいことは、全部ぶつけてくるんだ……言い方は悪いけど、明日母さんと話せなくなっても、後悔しないくらいの覚悟で、な」
「明日……」
兄にしては珍しい物言いに、明日奈はその言葉を心の中で反芻する。

「俺の最近の持論なんだ。今目の前にいる人が、明日いなくなるかもしれない、だからそれぐらいの失う覚悟で持って、人と後悔しないように接する……まあ、まだまだなんだけどな」
「失う……覚悟」
「お前との会話もおそくなったし」といって苦笑する兄に、けれど真剣にもう一つうなづいて、明日菜は車を降りる。

「……頑張れよ、明日奈」
「うん、ありがとう兄さ……」
と、そこで少しだけ言葉が止まる。久しぶりに親しく、いや、今後はもっと親しく話せるだろう兄に、ちょっとしたサプライズを思いついた。

「?どうした?」
「ううん、なんでも。ありがと、“お兄ちゃん”っ」
「!?か、からかうな!!」
普段全く呼ばれ慣れない呼称を使われて、真っ赤になった浩一郎が怒鳴り返す。そんな姿にどこか自分に近いものを感じて、明日奈は自分でやっておいて感じた気恥ずかしさに頬を染めつつも微笑みながら、母の居る家へと歩き出した。

────

「お前、刺し身切るのなんでそう絶妙に下手なんだ?」
「う、うるさいなぁ……」
呆れたように言った涼人に、拗ねたように直葉が返した。今夜の夕飯はサーモンの刺し身がメインなのだが、すぐははこういった魚介類や肉に対する刃物の入れ方がいまいち上手くない。今日も練習と称して切ってもらっているが、切り口は綺麗なのに、なぜか大きさが不ぞろいになる。

「お前は何つーか、こう、一定間隔で切るだけなんだがなぁ……」
「あーもう、気が散
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