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SAO─戦士達の物語
MR編
百四十二話 向き合う覚悟、失う覚悟
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た横顔が少し悩むように目を細め、ややうつむきがちになる。どうしたのかと尋ねるより前に、浩一郎が口を開く。

「ほんとは、ずっと前から、こうしてお前と話したいとは思ってたんだけどな……」
「え……そうだったの?」
「うん」
うなづきながら車のハンドルを切る彼の顔には、自嘲に近い笑みが浮かんでいる。

「色々あったからな……家族としても、兄妹としてもちゃんと一から、お前に向き合うべきだとは、この一年何時も思ってた……それに……」
「……?」
そこで、詰まるように言葉を止めた浩一郎に、彼は少しだけ震え待機で深呼吸をする。

「やっぱり、改めて謝るべきだと思ってたからな……」
「え……?」
「……お前があの事件に巻き込まれたこと……」
「あっ」
そこまで言われて、明日奈はようやく浩一郎が何を言わんとしているのかを察した。明日奈がSAOにとらわれることになった最初のきっかけは、出張によって最初のログイン日にSAOをプレイできなくなった浩一郎のナーヴギアを、興味本位でつけて起動したことがきっかけだった。その結果、ログインしたSAOから脱出できなくなり、二年以上も野時を、明日奈はVRワールドで過ごすことになったのだ。

「……お前がSAOにいる間、ずっと、毎日が怖かったよ……自分の所為で妹が死んだらどうしようって思ってな……毎日、毎日病院でお前が冷たくなってたらどうしようって考えて、それを忘れるために病院に行きもしないで仕事に没頭して……薄情な兄貴だと思ってるだろう?」
「兄さん……」
誰よりも自分を責めるように言った浩一郎の言葉に、明日奈は首を横に振った。それは本心からの言葉だ。

「そんなことない。目が覚めた日、お父さんたちより早く病院にきてくれたのは兄さんだったじゃない……あの時の兄さんの顔、まだ覚えてるよ……凄く心配そうにしてくれて、嬉しそうに泣いてくれて、抱き締めてくれて……私、凄く嬉しかったんだから……」
「……すまない」
浩一郎自身、この謝罪が今更意味のない事であることは理解していた。
そもそも、言い出す必要すらほとんどないこの謝罪を出したのは、自分の中の罪悪感を少しでも和らげたいが故なのかもしれない。明日奈から赦しを得ることで、その感情を少しでも紛らわせるための打算的な謝罪……そんな風に自分を責め続けていたせいか、明日奈の次の一言を、彼は思わず聞き返していた。

「それに……感謝もしてるよ」
「えっ?」
「SAO(あの世界)で過ごした時間……私は、無駄だったとか、意味がなかったとか、自分の人生を狂わせたなんて、全然思ってないもの。むしろ……兄さんはきっかけをくれたの。私に自分で選ぶ、自分の人生を歩くってことの意味に気が付くきっかけをくれて、大好きな人に合わせてくれた世界への切符をくれた……」
「明日
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