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歌集「春雪花」
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 哀しみて

  戸口を引きて

   眺むれど

 いづこも同じ

     春の宵闇



 一瞬の再会は寂しさを呼び寄せるだけ…。

 彼の姿…彼の声…思い出す度に切なくなり、ここに彼がいない哀しみに捕らわれてしまう…。

 哀しみに堪えかねて外へ出て辺りを見ても…そこにはただ、静かなる春の宵闇が広がっているだけであった…。



 暁の

  まだ遠ければ

   春の夜に

 今ひとたびの

    夢を見るなれ



 夜明けにはまだ早い夜更けの空…。

 春も半ばとなれば、夜も過ごしやすくなるもの。
 蛙の声が響く闇に…溜め息をつく…。

 何年も会わなければ…きっとこの想いも薄れ、忘れることも出来るのだろう…。
 全て断ち切り、彼に二度と会わないようにすれば…。

 だが…頭で理解していても心はそれを拒むのだ…。

 弱さゆえ…愚かなこととはしりつつも、彼と歩む夢を見てしまう…。

 ただそれは…春の夜の夢…儚き願い…叶わぬ希望…。

 それでも…このひとときだけ…彼と一緒に在れる夢を…。




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