3部分:第三章
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たのですね」
「はい」
周りの女達に雀眺と呼ばれたその老女は優しい微笑みを浮かべながら風呂にやって来たのだった。八兵衛はまだ彼女に気付いてはいない。それどころか有頂天になっていて狸の忠告すら奇麗に忘れてしまっていた。
「腰にはこの風呂が一番よいので」
「ええ、そうですよね」
「それはもう」
「そうなんですよ。じゃあ今日も」
こう言って風呂に入ろうとする。しかしこの時だった。彼女は不意に表情を変えた。そうして険しい顔で立ち止まり言い出したのである。
「ここには」
「!?一体」
「どうされたのですか」
「よからぬものがいます」
その険しい顔で娘達に言うのである。
「ここに」
「よからぬものとは?」
「何でしょうか」
「むむっ」
その険しい顔で急に念仏を唱え出した。すると。
「!?これは」
「狸!」
不意に八兵衛の姿が出て来たのである。皆その狸の姿を見て驚きの声をあげる。
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