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仮面ライター
第1話Aパート
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、その痛みは軽く、それ以上にぶつかってきた相手に一言言ってやりたい気持ちの方が強かったので相手を睨みつけた。
 相手はスーツを着た女性だった。歳はそこまでとっているようには見えず、30代前半ぐらいだろうか。
「いたた、ごめんなさい。急いでいたもので……いけない!」
 「気をつけろ!」と言おうとした手前、女は慌てて散らばった金属の塊を拾ってスーツケースに入れ始めたので門司は早く文句を言いたいがために嫌々ながらも手伝ってやることにした。
 拾い終わって、ようやく怒ろうとすると、
「ありがとう。怪我は大丈夫そうね。それじゃ!」
 といって、女はそのまま立ち去ってしまった。
 吐き出せなかったイライラが募る中、少し離れたところに光る銀の塊を見つけた。
「見落としていたのか。これは……ライター?」
 タバコを吸わないどころか、まだ未成年の門司には数ヶ月前に辞めたバイトの場以外ではフィクションの世界ぐらいでしか縁のなかった代物だった。
 しかし、妙に大きい。スマートフォンぐらいはある。彼の記憶の中のイメージとは大きく異なっていた。
 ドラマで見たように蓋を開き火を点けようとするがボタンが固くて押すことができなかったので、仕方なく鞄の中に入れた。
 こんな朝からここをスーツで通るということは通勤中だろうからそのうちまた会う機会があるだろうと思ったからである。
 そして、ちょうど鞄を開けたついでに見た携帯の時計が思っていた以上に進んでいたので、泣きっ面に蜂とはこのことかと思いながら大学に走るのだった。

 講義中。鞄から小型のノートパソコンを取り出し開き、SNSを見始める。
画面に流れる自分の小説へのコメントを適当に返していく。
 門司は大学に通っている一方で、ネットで作品を連載している作家でもある。
 しかし、本人は専ら紙の本の方が好きなので、自分の小説が紙媒体になるまでは覆面作家として活動するつもりでいる。
 コメントを返し終えると、そのまま小説の続きを書き始める。興味のない講義はこのようにして過ごすのが日常だった。

 昼休み。自分の周りが忙しなく教室を出ていく中、門司はまだ小説を書き続けていた。
そして、ほとんど人がいなくなったのを見計らってようやく片付けて自分も教室を後にした。
 食堂までの道をなるべく人に当たらないように気を配りながら歩く。
 友人同士で話し合ったり、スマートフォンに気を取られて周りへの意識が散漫になっている連中を信じるくらいなら自分から避けていった方がマシだというのが門司の持論である。
 食堂に着いてからも、同じような調子でうどんを頼んで、受け取り、そしてレジへと向かい精算を済ませて席に座るまでただ無心であった。
 騒がしい食堂の中、一人静かににうどんをすする。たいして美味くもないが、コストパ
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