第二百五十五話 帰りの旅その十二
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「ですから」
「そうあるべきか」
「左近の言う通りじゃぞ」
羽柴も二人に言う。
「御主達もわしに様に食え」
「たんまりとですか」
「そうじゃ、食え」
是非にと言うのだった。
「わかったな」
「はい、それでは」
「その様に」
二人は羽柴に頷いた、そしてだった。
今実際に牡蠣等をたらふく食った、その彼等も見てだった。
信長は茶を飲みだ、こうも言った。
「安土では山海の珍味が揃えられてな」
「先の安土での宴の様に」
「あの時以上であろうな」
こう家康にも笑って言う。
「何しろ天下の憂いを消したのだからな」
「魔界衆を」
「あの者達に勝ったのじゃ」
「その祝いだからこそ」
「あの時以上の宴になるぞ」
それこそというのだ。
「楽しみである」
「ですか、では」
「竹千代、贅沢を好かぬ御主じゃが」
それでもというのだ。
「この度は楽しんでもらいたい」
「宴が宴なだけに」
「だからじゃ、思う存分楽しむのじゃ」
「さすれば」
「そういうことでな、もっともわしは酒があってもな」
天下一の酒がだ。
「わしは飲めぬがな」
「ですな、吉法師殿は」
「そのことは仕方ない」
身体が受け付けないのだ、信長の場合は。彼は酒を少し飲んだだけで酔い潰れてしまいしかも次の日頭が痛くて仕方なくなるのだ。
「わしも残念じゃが」
「では茶ですな」
「それを飲む」
天下一の茶をというのだ。
「そうして楽しむわ」
「その宴を」
「その様にな」
こうした話もしてだった、信長は。
大坂での休息を楽しんでからだった、それから。
都を経て安土に向かう、彼等の帰りの旅も終わろうとしていた。
第二百五十五話 完
2015・12・5
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