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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十二話 第三次ティアマト会戦(その1)
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とい新規編制の二個艦隊に苛立っている。やはりあの艦隊は寄せ集めでは無い。精鋭と言っていいだろう。

中央の二個艦隊はミュッケンベルガー元帥の直属艦隊とミューゼル提督の艦隊だ。攻勢を強めてくる。徐々にではあるが艦列が後退しつつある。しかし、まだ決定的な差ではない。

「敵左翼、混乱しつつあります!」
「崩れたか!」
「手間を懸けさせおって」

敵の左翼が混乱しつつある! 少しずつではあるが後退している。ドーソン大将をはじめ参謀たちは色めきたった。指令部に喜色が満ち溢れた。
「第三艦隊を前進させろ、敵の左翼を粉砕するのだ」

攻撃を命令するドーソン大将を私は慌てて止めた。
「お待ちください。あれは罠です。その証拠に敵の左翼には無傷の部隊が後方にあります。前進は待ってください。もう少し様子を見ましょう」

「何を言う、敵は寄せ集めなのだ。今こそ攻撃のチャンスだ!」
「敵中央攻撃を強めつつあります!」
オペレーターの声が指令部の緊張感を高める。

「このままでは中央が持たん。第三艦隊を前進させよ」
「……」
駄目だ。目の前の好機に目が眩んでいる。しかしあれが本当に敵の混乱だとは思えない……。



■  帝国軍総旗艦ヴィルヘルミナ エルネスト・メックリンガー

事態は急変した。突然元帥が崩れ落ちると顔を蒼白にさせ、体を海老のように丸めて胸をかきむしった。司令部の空気が一瞬にして凍りつく。
“元帥”、“ミュッケンベルガー元帥”司令部を悲鳴が包む。

「元帥、これを、ニトログリセリンです」
私は元帥に駆け寄り、用意して有ったニトログリセリンを元帥の口に押し込むと、元帥の胸元、ベルトを緩めた。元帥は脂汗を滲ませて床に突っ伏したままだ。
「軍医を呼んでくれ、それと毛布を」

こうなった以上、行動に出ざるを得ない。ヴァレンシュタイン中将の言葉が蘇る。
〜指揮権の委譲が出来ない以上、全軍の指揮は司令部より行なう事になります。シュターデン中将に指揮を任せられない以上、メックリンガー少将が指揮を執るべきです。〜

〜司令部の参謀に協力を求めても無駄です。彼らは反発するだけでしょう。協力が期待できない以上、残る手段は制圧しかありません。〜
時間はかけられない。先手を取る。

「小官が指揮を執ります。指示に従ってください」
「何を言っているのだ卿は。指揮は私が執る」
馬鹿が! シュターデンは全軍の指揮を執る機会に顔を紅潮させている。お前に指揮を執る力が無いからこんなに苦労しているのだ。

「小官はミュッケンベルガー元帥より、指揮を執るように命じられています」
「なんだと」
呆気にとられるシュターデンに私は懐から文書を取り出した。そして読み始める。
「万一の場合は、宇宙艦隊を指揮し適宜と思われる行
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