第二百五十五話 帰りの旅その八
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「安土に帰れば政にかかるぞ」
「上様、そして安土では」
蘭丸が言って来た。
「まずは」
「宴が」
「奥方様がお待ちです」
「文が来たわ」
実に嬉しそうにだ、信長は言った。
「宴の用意をしておくとな」
「では」
「うむ、戻ろう」
その安土にというのだ。
「そしてじゃな」
「帝もです」
「安土に来られるか」
「公卿の方々も」
「そうか、では帝に申し上げよう」
是非にという言葉だった。
「天下の憂いを取り除けたとな」
「そしてその魂を収めたと」
「そのこともな」
「そうされますか」
「帝には既に文を送らせてもらった」
御所、そこにおられる帝にだ。
「魔界衆を滅ぼしたことはな」
「そしてですか」
「帝に来て頂いてな」
その安土にだ。
「盛大な宴を開くことになった」
「喜ばしいことですな」
信忠も言って来た。
「まことに」
「全くじゃ、では安土に帰るまでが戦じゃ」
「まだ戦ですか」
「勝った、しかしじゃ」
「油断するなということですか」
「勝ってこそじゃ」
まさにその時からというのだ。
「油断せずにな」
「帰るべきですな」
「そこで気を抜いて落馬でもして死ねば笑いものであろう」
「確かに。その様なことになれば」
「だからじゃ、勝ったな」
「今の様な時こそ」
「油断せずに戻るのじゃ」
そうすべきとだ、信長は己の嫡子に話した。
「わかったな」
「はい、それでは」
「安土に戻るぞ、そして十兵衛じゃが」
信長は明智のことについても言った。
「もう寝たか」
「どうやら」
「この度の戦の活躍天晴であった」
その武勲を労うのだった。
「その論功比類なきじゃ」
「そう言われますか」
「うむ、あ奴も老中じゃ」
本能寺の後役目を解かれ謹慎していた、そして魔界衆との戦になってそのうえでようやく出て来たのである。
しかしだ、その彼をというのだ。
「任じよう」
「そしてですな」
「天下の為に働いてもらう」
「あらためてですな」
「そうしてもらう」
こう言うのだった。
「これからな」
「ですか」
「何かと忙しくなる」
それこそというのだ。
「これからはな」
「政において」
「御主達も同じじゃ」
今ここにいる信忠達もというのだ。
「思う存分働いてもらうぞ」
「それでは」
「うむ、政に励むぞ」
こう言ってだ、そしてだった。
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