巻ノ四十一 石田三成その五
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「我等もとは」
「殿はわかるにしましても」
「ほんの十石取り程の我等まで石田殿に会うとは」
「それは」
「石田殿は人を石高で見極められませぬ」
兼続は十勇士達にも話した。
「ですから」
「それで、ですか」
「我等ともですか」
「お会いしたい」
「そうお考えなのですか」
「そうなのです」
このことをだ、兼続は話した。
「貴殿達の先の戦でのお働きを聞いて」
「あの徳川家とのですか」
「戦とのことをですか」
「石田殿が耳にされ」
「そのうえで」
「左様です」
その通りだというのだ。
「それでなのです」
「あの戦いはです」
「大殿が采配を執られたもので」
「そして若殿と殿が陣頭で戦われ」
「我等はただです」
「殿に従っただけですが」
「いやいや、一騎当千でしたので」
その戦ぶりがというのだ。
「ですから」
「石田殿もですか」
「我等とですか」
「お会いしたい」
「そうお考えですか」
「そうなのです、ではおいで下さい」
こう言ってだった、兼続は彼等も茶室の中に案内した。そして実際にだった。
彼等も茶室の中に入った、茶室の中は思ったより広く彼等も全て入ることが出来た。大柄な清海も楽に入られる入口だった。
そこに入るとだ、茶室にだ。
一人の若い鋭利な顔立ちの立派な身なりの男がいた。兼続は彼を指し示してそのうえで幸村に対して言った。
「こちらの方がです」
「石田三成と申します」
彼は自分から名乗った。
「以後お見知り置きを」
「真田幸村と申します」
幸村も名乗った、そして十勇士達も。
そしてだ、こう石田に返した。
「今度共宜しくお願いします」
「それでは」
「はい、それでなのですが」
「この度はです」
高く奇麗な声でだ、石田は幸村に答えた。
「是非真田殿とお会いしたいと思いまして」
「それで、ですか」
「直江殿にお願いしてです」
そうしてというのだ。
「こちらに来て頂きました」
「家臣達と共に」
「そちらの方々もです」
石田は幸村だけでなく十勇士達も見ていた、そのうえで言うのだった。
「お会いしたいと思いまして」
「そのことは直江殿にお聞きしましたが」
「実際にですか」
「石田殿は我等にですか」
「お会いしたいのですか」
「そう思いまして」
それでというのだ。
「お呼びしました」
「ですか、我等も」
「殿と共にですか」
「石田殿にですか」
「そう思われているのですか」
「真田殿も貴殿達もです」
石田は十勇士達に生真面目な声で語った。
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