第1話
[1/8]
前書き [1]次 最後
決して綺麗な大地と呼べない荒野。周りの大気は汚染され、そこには人間も動物も、果ては植物でさえ存在しない。人は、その空気を体内に摂取するだけで、焼けるような感覚に負われ、内からあっという間に朽ち果てる。その大気は皮膚に触れるだけでも火傷のような害を為す。つまり死だ。例外はあれどほとんどの人間は必ず死に至る。
だが、そんな悪夢のような大地には、もう一つの悪魔が潜んでいる。
汚染獣―――汚染された大地に生きることが許された唯一の生物。生物というがそんなカテゴリに収まる存在ではない。
人を襲い、人を食い散らかし、人を捕食しようとする。普通の人間には勝ち目なんてものは元からない。そう、一般人には。
武芸者―――そう呼ばれた彼等は違う。生まれもって秀でた人間の潜在的力を駆使し、自分の力を最大限発揮できる錬金鋼《ダイト》という得物を片手に、凶悪な汚染獣に立ち向かう。
だが、人は息を吐く。そして吸う。つまり、空気が死んでいては、いくら武芸者という人間を超越した彼等が居ても、一般人も武芸者も危機的状況下に置かれているのには何ら変わりはない。
故に、人は生きるために、自律移動型都市《レギオス》の中で、人生を消費するしか他なかった。そしていずれレギオスの中で死に絶えるしかない。ここはそんな世界―――
湿り気のない土と、ところどころに何かの傷を残した抉れた大地、岩が散乱したそこで、バスのようなものが高速の勢いで突っ走る。
それはバスと言うには程遠く、かけ離れた様をしたまるで戦車のような頑強なバスが大地を突き進む。
ガタン―――ゴトンガタン――ガタンガタンと不規則に揺れる放浪バスの中、1番後ろの席に座っていたレイフォンは、外の景色を窓辺から微かな恐怖心を募らせていた。
(もし、汚染獣にこのバスの居場所を知られたらどうしようもないよね)
縁起でもないことをふと心の中で呟く。
こんな汚染された大地の中で汚染獣にでも襲われたら、いくら放浪バスが普通のバスよりも強化された鉄の塊とはいえど、汚染獣の前では紙切れに等しい。だから常に放浪バスの運転手は気を張らなければならない。汚染獣に見つかる前に、気付き、岩陰に隠れるか、そこから遠くへ移動する。隠れる場合なんて、何十時間待つことも余儀なくされる。
ふと、もし、自分が錬金鋼《ダイト》を持っていたら汚染獣くらい―――なんて無粋な事を考えてしまった。その考えをすぐに霧散させ、苦笑してしまう。
レイフォンは砂塵によって見えなくなった外界から、目を離す。
そういえば―――と、今の今までちゃんと寝てないことに今更ながら気づく。仮眠はとっているし、別に寝ないといけない。脳がそう警告するほど追い込まれてはいない。だけど疲れは取れはしない。自分の
前書き [1]次 最後
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ