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第七話 ノイエ・サンスーシに行きます。
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帝都 ノイエ・サンスーシ
 ここ、ノイエ・サンスーシはまさしく貴族社会の総本山とでもいうべき場所であり、大きく四地区に分かれている。政権の中枢で有って謁見などが行われる東園、皇帝一家の生活する南園、後宮の寵姫などが住む西園、シカやキツネなどが放たれている北園、その総面積は66平方キロ、回廊の総延長は400キロに及ぶ。

 ノイエ・サンスーシの皇帝一家が居住する南園には、毎年多くの貴族の少女が行儀見習いということで宮廷につかえるケースが多々ある。

 むろん、無造作に選ばれるということではない。家柄、その者の容貌、血統、遺伝病の有無などを本人のみならず何世代にもわたって調査し、合格した者だけが上がることを許させるのだ。
 これには、行儀見習いで宮中に上がる少女から、皇帝陛下や皇太子の寵愛を受ける者が少なからず出ていること、貴族間にある対立、勢力争い等において足元をすくわれることのないよう配慮すること、等の様々な事情がある。

 宮中にあがった少女には、家柄などによるが、専用の侍従武官や侍女が仕えることができる。もっとも、本人自身が皇帝一家にお仕えするという立場なので、皇帝一家直属の侍従武官や侍女に比べれば地位は低いことは言うまでもない。だが、それにもかかわらず、皇帝陛下御寵愛のチャンスに食いつこうと、たくさんの応募者が宮中に上がる予定の侍女の「そのまたお付きの者」枠に殺到していた。むろんその者たちについても厳重な調査が行われることは言うまでもない。

 にもかかわらず、どうにもこうにも貴族らしからぬリベラルなアレーナが抜擢されたのはなぜか?それはひとえに皇帝陛下の「鶴の一声」である。
 マインホフ元帥からアレーナのことを聞かされていた皇帝陛下は「ならばアレーナをカロリーネの学友として迎え入れよ。」と宮内尚書に直接もうし付けたのだった。本人にしてみればいい迷惑、超迷惑、ド迷惑である。


 ぶ〜たれながらも支度を嫌々し終わったアレーナ・フォン・ランディールがランディール侯爵の娘として、カロリーネ皇女殿下の侍女として宮中に上がったのは、ちょうど帝国歴478年の12月1日の事、外は白銀の世界に覆われ、雪の精があちこちで舞う厳寒の頃であった。

「そちが、アレーナと申すか。マインホフ、グリンメルスハウゼンからよう話を聞いておるわ」

 皇帝御自らが黒真珠の間で、アレーナと謁見している。周囲には誰もいないが、アレーナはちょっといたずらっぽく片目をつぶってやおら唇に指を当てた。

「はっはっは。なるほどの。では、遠慮のうお茶を上がるがよい。さきほどから外は寒い。そちの顔は待ちきれぬといいたげにしておるぞ」

 急に話題が変わったのは、この黒真珠の間においても盗聴器などの類がひそかにしかけられていることをアレーナが察知したためであ
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