三項目 『めいろ ー名無しの森ー』
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リもとい、悠里の事を今まで一度も苗字呼びした事がないのだ。 長い付き合いなだけに、今さら苗字呼びとか、なんか背中がむず痒い。
ちなみに他の呼び方ならよくしてる。 特にユリコちゃんは私的にベストだったのだが、当人は酷くお気に召さなかったようで1日無視され続けたのは辛かった。
過去の思い出にふけっていると、ユーリが呆れた表情を浮かべていた。
「おい、で? どうすんだ、咲良さん?」
「ん? んー、コードネームとか!バーボンとか、ウォッカとか?」
「黒づくめかよ。 あと却下。 またどうせ、犬耳やら男のコやら言うだろおまえ」
「あ、自覚あるんだ……ごめんなさい殴らないでっ!」
反射的に謝ってしまう自分が恨めしい。 しかし、このままというのもなんか釈然としない。 ので、意を決して初苗字呼びを敢行する。
「……う。 か、カミクラくん」
「……は?」
「反応が酷い?!」
「おまえなに言ってんの?」とでも言いたげな呆れ顔をされてしまう。
「いや、だって……その、初めてだし……恥ずかしい」
「あ〜、そういえば一度も苗字で呼ばれた事がないな」
胸の前で人差し指をツンツンと突き合わせてながら、ユーリの反応を伺うが平然と答えられ、なぜかドッと疲れた。 私だけが恥ずかしがって馬鹿みたいじゃないか。
羞恥で火照った顔を手団扇で扇いでいると、くすくすと口に手を当てて笑いあっているアリス達と目が合った。
「ねぇ、あたし。あたし、こーゆーの知ってるわ、あおはるっていうのよね!」
「そうね。ラズベリーみたいに甘酸っぱくて美味しそうな響きね、あたし」
「それにおねえさんなんてさくらんぼみたいにお顔が真っ赤よ!」
此方をチラチラと見ながら言葉あそびのような会話に興じるアリス達に私から言える事はただ一つ。
「やかましいっ!」
??
森に入ってから、およそ一時間かけてようやく陰鬱とした森を抜けたユーリ達を待っていたのは、どこまでも続く平野でただひとつ異様な存在感を放つ赤いお城。
細部まで作りこまれた城に感嘆の声を漏らす中、アリス達はスカートの端を風に靡かせくるりとステップを踏んでユーリ達と向き合った。
「これで名無しの森はお終いね」
「けれど、次の物語が待ってるわ!」
「お次の舞台はいじわるおばさまが待つお城のなか!」
「お兄さん達はうさぎさんを救えるかしら?」
「「さぁ、物語をハッピーエンドに導いて!」」
そして、二人は顔を見合わせると声を合わせ、高らかに叫んだ。
『真っ赤なお城に、いじわるおばさま。 愉快な仲間と、恐ろしいかいぶつ!みごと、ジャバウォックを討ち取って、哀れなうさぎを助けましょう!』
クエストメッセージの出現と
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