三項目 『めいろ ー名無しの森ー』
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ユーリ達御一行が踏み入れた『名無しの森』は、不思議な国の名に違わない森だった。
幹が捻れた巨木が幾つも聳え空からの日差しを遮っているものの、根元には青白く発光するキノコが生え出ており、視界に困ることはない。 幻想的な雰囲気を醸し出している森を二人の童女が謳いながら進む様子は非常に絵になった。 しかし、ただ平和に済ませられないところがゲームとしての性なのだろうか。 前触れもなく、あどけなさの残る歌声がピタリと止んだ。
アリス達が謳うのを止めて数秒。 ガサリと葉が揺れる音と共に木々の影からずんぐりとした、丸みを帯びたシルエットが浮かび上がり、アリス達は喜色に満ちた笑みを浮かべた。 そして、敵の全貌が明らかになるとユーリ達は悲鳴に似た叫びを上げた。
「「い゛っ?!」」
カラフルな大きな卵に子供が描いたような歪な笑顔が張り付き、ひょろりとした手足が生えたナニかを楽しそうに指差していた。
『まぁ! 見て、あたし! ハンプティーダンプティーだわ!』
『そうね、ハンプティーダンプティーね、あたし!』
『マザーグースの詩』に登場する擬人化した卵が、童女達の声につられてやってくる。 手に巨大なナイフやフォークを持って向かって来る彼奴らの頭上には敵性エネミーを表すオレンジ色のカーソルが浮かび上がる。 その数は3。 二人のアリスがキャッキャッとはしゃぎ、 ユーリ達が色んな意味で驚いて動けずにいるとパーティーに強制参加してきた『イカれた帽子屋』こと〈マッドハッター〉と『時計ウサギ』こと〈ウォッチ〉が三体のハンプティダンプティに向かって駆け出した。
一足で間合いを詰めた〈マッドハッター〉は、いつの間にか抜剣した十字剣に銀の光を纏わせ、極彩色の卵を十字に切り裂いた。
片手剣 二連撃〈セイントクロス〉が鮮やかに決まり、吹き飛ばされたハンプティーダンプティーはボヨンゴロゴロと転がった後に、破砕音と共に砕け散った。 見た目の異様さと異なり、レベルそのものは大して高くないのかも知れないと二人が思っている間にも、時計ウサギは二体のハンプティダンプティへと弾丸の如く突っ込んで行った。
後ろ脚のバネをフルに活かした跳躍で、技後硬直にあるマッドハッターに襲いかかる卵に突進を仕掛ける。 接敵の瞬間、小さな体躯を捻るとその反動を乗せ、木の棍を一薙ぎ。 カコーンと清々しい音と共にハンプティダンプティーが吹き飛び、遠くの方で爆発四散した。 そして、残った一体もマッドハッターによる手際の良く、処理すると血糊を払うように二度十字剣を振るい、剣帯へと吊るした。
謎解きメインなため、出現エネミーの平均レベルは案外低めなのかもしれない、とこの後の展開が楽になることに期待を抱いた。
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