夏休みT
第五話
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返す。
「だって、柔らかかったでしょう?」
「ぶふっ?!―――」
……こいつ、俺の心内を見透かしてやがる!!
脳内にあの時の光景と、柔らかさの感触が、鼻腔に女の子特有のいい匂いが想起される。
俺はその発言に、口に含んでいた味噌汁を思わず噴き出した。
1
朝食後、俺とカナは家を出て東京観光へと洒落込んでいた。
原宿、渋谷、秋葉原と渡り、時にウィンドウショッピングをしながら街を転々と歩いていた。
夏休みとあってか、何時もより何処も人通りが多い。
旅行客や、遊びに出て来た若者の姿がちらほらと見える。かく言う俺達もその一人だ。
流石に夏の東京だ。チリチリ…と身体が焼ける。
太陽が照り付ける様に燦々と降り注ぐ。外気温が高く、自然と皆薄着となっていく。
中には俺の精神衛生上、危ない様な格好をした女性も多々いる。
キャミソールから谷間が見えていたりするから危ない。それに汗で下着が浮かび出たりしている。
(……うっ)
身体の芯に沸騰した血液が集まっていく様な感覚が走る。HSSの前兆だ。
「…時夜、どうかしたの?下を向いて歩いていると危ないわ」
「いや、なんでもないよ。…そうだな、確かに危ない」
下を向いて歩いている俺に、目の前を歩く少女の声が耳に響く。
顔を上げると、そこには純白のフリルの付いたワンピースを着た少女が立っていた。
更に、いつも腰元で纏めている髪を今は黄色のリボンでポニーテールにしている。
……似合ってるな、髪型も相まって。
その姿は、清楚な印象で何処かお嬢様の様にも見える。
髪型を変えただけでも女の子は見違えるという話は、本当だと今になって思う。
やっぱり、カナは可愛いというよりも綺麗という印象が強い。
そして、思わずその姿にドキリ…とする。
「…それよりも、その服で良かったのか?」
「ええ、時夜が選んでくれた服ですもの」
今カナが身に付けている衣服、それは先程立ち寄ったブティックで購入したものだ。
ご機嫌なのか、俺に満面の微笑を向けてそう言うカナ。そうして見せる様にその場で一回転する。
女性の衣服については疎い俺だった。だが、店で見ている際に自然とカナに似合うと思ったのだ。
財布から諭吉が消えて逝ったが、カナのこの笑顔が見れただけでも、儲けものだろう。
軍資金も貰っていたし。それに、普段からお金をあまり使わない俺にとってはあまり痛手ではない。
「…そうか、それなら良かったよ。そろそろ、昼か。昼食にしようか、カナ?」
俺はそう言って同じく笑みを浮かべ、視界に映る電工式の時計に目を向ける。
「…そ
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