夏休みT
第五話
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おいても、あまり女性と接した事がなかった為だ。視線が合うだけで、逸らされる。
俺が少し近付くだけで相手は何故か赤面して、俺から距離を取るのだ。
……流石に俺も傷付いた。
前世において、俺と普通に接してくれたのは三人の少女達のみ。
一歳年下の少女である真綾、二つ年下の桜華、そして静流だ。
女性とはその三人位としかちゃんとした友好がなかった。
よく前世の友人には、朴念仁や、リア充爆発しろ、と言われたけれど思い当たる節はない。
……あの二人は元気にしているだろうか?
真綾と桜華の顔が頭を過る。…いや、俺の考えられる事ではないだろう。思考を破棄する。
俺はあの世界では最初から存在しない人間だ。…俺はあの世界を捨てたのだ。
だけど、だけどだ。思い出までもを捨てた訳ではない。
記憶に残る彼女達が、ただ幸せにしていてくれればいいと、身勝手かも知れないがそう願う。
……不意に思うが、二年前だ。感傷的になった故に、少女との出会いを想起する。
俺は目の前の栗色の髪をした少女に視線を向ける。
「…どうかしたかしら、時夜?」
「いや、なんでもないよ“カナ”」
俺の視線に気付いた少女は首を傾げる。
三年前に俺の従兄妹に当たる、この少女は、カナは“生まれた”のだ。
―――遠山カナ。
遠山家の長女として、キンジの双子の姉という事に表向きはなっている。
取り巻く人間も、世界も、初めからその存在をある様に受け入れている。
だが、そこには俺達エターナルが関わっている。まぁ、俺のせいなんだけど。
本来ならば、彼女はこの世界には存在しない筈の少女だ。
本来はキンジの兄の女装時の姿として原作に出てくる。
だが、その原作設定も俺によって崩れ去っているのだ。
そもそも、俺が存在する時点で原作からは大いに剥離している事だろう。
「そういや、カナ」
「何かしら、時夜?」
「なんで朝に、俺の布団で寝てたんだ?」
それが一番聞きたかった事。
思わず朝からホラーな体験をして、いい目覚めだったのが台無しだった。
「ああ、朝早くに着いたのだけれど、時夜が気持ち良さそうに寝ているから私も魔が射してね」
話によると。朝早くに寝台列車で着いたのだが、着くのが早く、列車でよく眠れなかった為。
朝に俺を起こしに来た際に、睡魔に襲われた、という事らしい。
「だからって、人の上で寝るなよ」
それで、俺は怖い思いをしたんだ。
それに女の子が男の寝床に入り込む等、無防備極まりない。あまり関心出来た事ではない。
「…それでも、時夜には役得だったでしょう?」
「……何がだ?」
俺は味噌汁を呑みながら、冷静を装ってそう聞き
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