夏休みT
第三話
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《???・???》
PM???時・???分
極東の島国、その首都たる東京は眠らない街だ。
東の京の名を冠する街は、夜の帳が降りても未だに多くの人に溢れ、極彩色のネオンの光が眩い。
そのネオンによって、眩い星々の光は退廃の街には届く事はない。
多くの飲食店や商業施設も夜明けまで営業している。
そして、これからが“自分”達の時間だという人間もいる事だろう。
だが、どれほど明るく照らし出そうとも、夜の街から闇が完全に消える事はない。
「―――遊んでくれませんか、私と」
人気の絶えた夜のお台場の臨海公園。辛うじて汚れた大気の層の向こうより、星の淡い光が届く。
海を見下ろす事の出来る展望通路を二人の男性が通り掛った時、突然呼び止める声が小さく響いた。
薄ぼんやりと明るい街灯の下に、一人の女性が立っている。否、まだ女性と呼ぶには未発達。
艶やかな藍色の髪、それと同じく藍色の瞳をした、小柄な幼い少女だ。
膝丈までの白い手術着の様な布切れで身体を覆っているが、その下には何も身に付けていない。
それに何処から来たのか、少女の足元は裸足である。
「…お譲ちゃん、こんな時間に一人でいると危ないよ、ご両親は?」
「…病院からの抜け出しという訳でもなさそうだな」
男達二人は自ずと、少女の元へと赴く。
近寄ると少女のその美しい容姿が露わになった。
透き通った白磁の様な肌と大きな瞳。完全に左右対称の整った顔立ち。
一人の男が薄着の少女に自身の上着をかけて話し掛ける。
もう一人はその少女の異常性から、携帯で病院からの捜索願いが出ていないかを確認する。
二人は巡回中の武偵庁の武偵であった。学生の夏休みも始まり、夜遊びをする人間も出てくる。
ここ最近の都内は本当に物騒だ。故に、この少女をこんな場所に一人でいさせる訳にはいかない。
少女は何も答えない。ただ物憂げに、訴えるかの様に視線を送るだけだ。
「―――どうやら今日は当たりだった様ですねぇ」
二人の武偵の背後より、舐め回す様な不快な視線。穏やかでありながら感嘆とした声がした。
前触れもなく出現した、濃密な狂気ともいえる異様な気配。それに彼等は驚いて振り返る。
―――そう、それは唐突に現れた。
警戒を怠った訳ではない。
二人も武偵庁に所属する腕利きの武偵だ。それが、外敵をこの距離まで接近を許す程甘くはない。
そして、片方の男性は東洋術式に秀でた能力者でその能力を示す指数である“G”も高い。
空間・結界系統を得意とした彼の包囲網を潜るのは並みな事ではないのだ。
それを無視するかの様に、その存在は本当に唐突に現れたのだ。街路樹のその下。
蛍光
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