夏休みT
第二話
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「はい、夏休みの課題の読本の感文を書くのにアナウンス系の本を探していまして…」
その声音から言って、滞りはあまり良くないみたいだ。俺も本を探しているし、ここは手伝おうか。
「…そっか、俺もじゃあ手伝うよ。美咲の将来の夢はアナウンサーだったけか」
夏休み前の授業の将来の夢という課題の作文で、美咲はアナウンサーと将来の夢を語っていたな。
原作の美咲は武偵であったが、それ系統の仕事をしていた。
少々の違いはあるが将来の夢はやはり、そっち系統なのだろう。
「…しかし、ご迷惑では?」
「いや、俺も本を探していたしな。探すついでだ、別にいいさ。」
「……分かりました。それではお願いします」
それにしても…と、二の句を続ける美咲。
そして、何処か嬉しそうに口にする。
「…覚えていてくれたのですね、私の夢」
「友人の夢だしな、そりゃ覚えているさ。出来る限り応援したいしな」
「……そう言ってくれたのは両親を抜いては異性では時夜さんが初めてです。他の人達は私の夢を笑っていましたから」
寂し気にそう呟く。
美咲は少々上がり症な所もあり、実際には人前では上手く話す事が出来ない。
それを笑っていた奴らがクラスにはいたのだ。
そんなモノは正に夢のまた夢だと。まぁ、そいつらは俺と亮が“お話”をしたけれどな。
きっと、美咲は心に傷を負った事だろう。自身の夢を貶されて。
「…いや、美咲ならきっとアナウンサーになれるさ。お前は大した努力家だからな」
一年生の時、上がり症を克服したいと俺達と色々と練習をした。
夢に向かって、休み時間に、昼休みに、放課後にアナウンサー関係の本を必死に読んでいる所を見た。
そんな奴の夢を笑うなんて、誰だろうと許せない。
「それに美咲は可愛いし、素人目でもいい声を持っている。だから周りの目なんて気にする事はない。きっと夢を叶えられる、俺が保障するよ」
そう力説する。
それは原作知識とはいえ、未来の事を知っているから言える事だ。
「…………」
「……美咲?」
何時まで経っても美咲からの返答はない。
不思議に思い、本棚の間から出て美咲の姿を見ると…。
「……あぅ……あぅ」
まるで瞬間沸騰機の様に、顔を真っ赤にして意識を手放して椅子に座りこんでいた。
……何故に?
「…どうしたんだろう、美咲?」
『……ハァ…鈍感ですね。今の、完全に口説き文句ですよ?』
今まで黙っていたイリスが口を開いてそう告げる。
口説き文句?……何が?
頭に疑問符を浮かべる俺を余所に、イリスは天然ジゴロなどと俺に対して口にする。
…だから、一体何がだ
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