あくる日の黄昏
第一話
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そうして両手の双刀で数分の間、舞を踊るかの様に振るう。
「……ふぅ」
軽く汗が頬を流れ、涼やかな風が身体の熱を冷ましていく。
息を吐き出して、剣を振るう手を休める。
『ウォーミングアップの方は、この程度でもういいですかね?』
「……だな」
『しかし、双剣の捌きもだいぶ上手くなったわね』
『そうですね、剣を振るう際のブレも見られなくなりましたし』
「いや、まだまだだよ」
その二人の言葉に、ふと苦笑いを浮かべる。…まだまだだ。
俺の目指す高みは未だ遥か遠い。
最初の方からは大分、進歩したとは自分でも思う。
最初は思考と身体に意識の違いがあり、身体が追い付いて来なかった。
両の剣を器用に使う事が出来なかった。
俺が父親に双剣の教えを請いたのは、今から三年程前。あの日、決意を新たにした日だ。
リアは俺の事を守って、包んでくれると言ってくれた。
彼女が俺の事を大切に思ってくれる様に、俺も彼女の事を大切に思っている。
彼女だけではない、俺にとっての大切な存在の人達。
きっと、これからも増えるだろう。その人達を俺は守りたいと思うから。
俺が二本の剣、それを選んだ理由。
一つの剣では己の身しか守る事が出来ない。
己を含めた何かを守る際には、剣は二つ必要となる。
いつか自分にとって大切な、守りたいと思う存在が出来た時。
その時に、一つの剣では事足りない。だから剣は二つ必要だった。
俺が守りたいと思う人達を守る為に、俺はこの剣を振るう事をあの日誓った。
壊す為ではなく、守る為だ。そこは履き違えてはいけない。
3
『さて、始めますよ時夜』
「ああ、こっちは準備万端だ」
……風が強いな。
そこから見る風景は、何処か寂しく思えた。
閉ざされた世界、それを包み込む夕闇の光がどこかノスタルジックな気分にさせる。
家から少し離れた市街地。その中層の雑居ビルの屋上、そこに俺はいた。
イリスの声に、気を引き締めて両の剣を握る手に力を入れる。
これから俺は再び生命を奪う。これから行われるのはただの蹂躙だ。
既に幾回として来た事だが、やはりは慣れない。だが。
俺はもう、後悔の無い道を進む事を選んだ。だから、迷う事はあっても後悔はしない。
『では、始めましょう』
その声と同時。
ビルの屋上を構成するアスファルトが轟音と共に爆ぜた。
そして、それと同時。
俺の糧となるべき対象を狩る為、赤の神剣魔法を突き抜けて、夕闇の東京の街並みに飛び込んだ。
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