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緋弾のアリア-諧調の担い手-
after days
第一話
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姿を覗かせた。
一人は自身の母親である倉橋時深。そしてもう一人は今想起していた女性である先生だ。


「おはようございます、先生」


そう言うと、先生はその特徴的な瑠璃色の瞳を細めて、表情を綻ばせる。
そうして、此処数日で既に聞き慣れたフレーズの言葉を口にする。


「はい時夜くん。じゃあ、それでは今日の検診を始めましょうか」







3







「…さて、これで今日の検診は終わりですね」


胸に当てていた聴診器を首元に掛けて、カルテを取り出して書き込むシャルニーニ。
俺は胸元を露出していた状態から、パジャマの上着をボタンを止めて着直す。


「…それでシャルさん、時夜の容体の方はいかがなんですか?」

「ええ、高熱も引いて身体の方の調子も大分良くなってきていますね。来週までは幼稚園の方は大事を取ってお休みなんですよね?」

「はい、一応の所はそうなっています。」

「なら、来週からは普通に通学しても問題はありません。ただ、その今回の症状に至った経緯がはっきりとしていないのが不安ですが…今の所は再発の兆しもないので大丈夫だと思います」

「そうですか、ありがとうございます」

「ありがとうございます、先生」

「いえいえ、良いのですよ。そうだ時夜くん、はいコレ」


そう言うと、先生は柔らかな笑みを浮かべて俺の頭を撫でる。
そうして起伏に富んだ胸の内ポケットより、棒つきキャンディーを俺に手渡す。


「…あ、ありがとうございます」


俺は表面上は笑みを浮かべながら、そのキャンディーを受け取る。
既に何本も貰ってはいるが、俺はその飴には一切口を付けていない。

見た目は美味しそうなオレンジ味の飴に見えるが、そうではない。これは完全に薬品の混じった物。
これが先に語った、油断ならない所だ。お父さん曰く、アイツは例外なく試験薬の実験に人を巻き込むらしい。

それはお父さんに実体験からきているもの故に、現実みがある。
故に、心苦しいが、先生から貰った物は基本的に破棄しろと言われている。

とりあえず、現実逃避はこの程度にして置こう。

先生の太鼓判も貰ったし、来週からは普通に幼稚園に通う事が出来るのか。
まぁ、幼稚園だし勉強に遅れるという事はないが。この疑似病人生活にも嫌気が射していた所だ。

漸く大義名分を掲げて、この生活から抜け出す事が出来る。


「……それでは、私はお暇させて頂きますね。午後からは武偵病院の方でちょっとした仕事ありますから」

「シャルさん、お忙しい所本当にありがとうございました」


互いに会釈して部屋を出て行く二人の後に続く様にして、俺もベッドから出る。



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