91話 剣士2
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現れるは巨大な体。紫色の羽に覆われた体。メキメキと音を立てて翼が生え、顔にはほとんどドルマゲスの面影がない。角が生え、翼が生え、何故か杖を取り込み。……見た目からも彼はもう人間ではないだろうし、もう戻れないって私でもわかる。
あの気持ち悪い水球が降り注ぐ。動きは阻害されなかったけど、きっとドルマゲスには益になってるんだろうな。体勢は立て直した。みんな傷を癒した。でも、でも。最初に感じていたよりもずっと大きな悪の気がドルマゲスから発せられていて、純粋な恐怖が私を支配する。
ううん、エルトこそ、ヤンガスこそ武器を構えているけれど、魔法に詳しいククールとゼシカは青ざめていて、のまれそうだ。
「ゼシカ!みんなにピオリム!ククール!トウカにバイキルト!ヤンガス!スクルトかけて一旦下がれ!トウカは……」
「言われなくとも、突っ込む!」
「違う、下がって!」
エルトは下がれって言ってるけど、防戦じゃ勝てない!……小手試し……には相手は強すぎるけど一撃を入れて下がろうとすると、にやりと笑ったドルマゲスにぶん殴られて私は吹き飛んだ。
息ができない。とっさに盾で守ったというのに盾が砕けるなんて……。なんとか、内臓破裂だけは回避したけど……もう盾がない。内臓破裂を回避しただけで激しい衝撃のせいで、起き上がれないのもまずい。直撃をぎりぎり避けたのに、内臓と肋骨が原型を留める程度には無事だってわかるのに、ごぶりと口から血がこぼれる。焼け付く痛みは一瞬、遅れてやってくる。
直撃を避けようがそれ以前にやばすぎるってこと……?ククールがすぐに無様に転がった私を助け起こしてくれてベホマ、それからスカラを何度も重ね掛けしてくれる。必死の表情で、なんだかドルマゲスを倒そうとするより……今を生き延びる為って感じがする。必死で、生かしてくれようとしてる。
そんな中エルトは振り返らない。振り返ったりしたらエルトもやられるから。心配してないんじゃなくて、リーダーとして振り返るような隙を見せないってことなんだろう。エルトはゼシカのバイキルトを受けて……私は吹っ飛ぶ前にククールがバイキルトを間に合わせてる……、槍で近づけさせないように切り裂くように攻撃していた。
そのダメージは決して大きくない。下手に踏み込めないから与える傷も浅い。でも、ヤンガスが近づく隙を作るために、メラゾーマを浴びせたりヒャダルコでダメージよりも動くのを妨害する後ろのゼシカを、私たちを守るためにエルトは必死だった。
……あれ。ベホマで傷はとっくに治ってる。なのに痛みがあるように思う。ちゃんと分かってる、本当はもう傷なんてなくて痛くもないってことぐらい。でも人間の頭っていうのは不思議なもので、魔法がある世界に生きてるくせに瞬時に治った傷がまだあるように錯覚してるん
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