第84話
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「殺すか、殺されるか。奪うか、奪われるか。僕は君と出会うまでそんな事ばかり繰り返してきた。」
「で、でも……。お姉さんとレーヴェと一緒にいて幸せだった頃もあるのよね……?」
ヨシュアの話を聞いたエステルは恐る恐る尋ねた。
「……レーヴェが話したのか。………………………………。その記憶はあるけどまるで他人事みたいなんだ……」
「え……」
ヨシュアの言葉を聞いたエステルは呆け
「心が壊れた時……僕はハーメルの思い出は自分の物じゃなくなった。人であることを辞めて人形になったからだと思う。」
「………………………………」
「姉さんが死んだ時の記憶もはっきりと覚えてはいるんだ。あの時、僕と姉さんは待ち伏せしていた男に襲われた。男は僕を殴り飛ばして……姉さんの上にのしかかった。」
「…………ッ………………」
そしてヨシュアの話を聞いて顔を青褪めさせた。
「幼い僕は、それが意味することは分からなかったけど……それでも嫌な感じがして男の背中に掴みかかっていた。もみくちゃになった挙句、すぐに弾き飛ばされたけど……。いつの間にか、僕の手には男の銃が握られていた。」
「………………………………」
「思えば、あの時から僕には人殺しの才能があったんだろう。教わりもしないのに銃のセーフティを外した僕はためらうことなく引金を引いた。喉に穴を穿たれた男は不思議そうな顔をしてから口から血を吐いてうずくまった。そこで僕は、ようやく自分が人を撃ったことに気付いた。」
「………………………………」
寂しげな笑みを浮かべて語るヨシュアの話をエステルは悲しそうな表情で何も返さず、聞いていた。
「でも、男はまだ死んでいなかった。血走った目でヒュウヒュウと喘ぎながら軍刀を抜いて躍りかかってきた。獣に襲われた時のように僕は身を竦めて目を閉じたけど……衝撃はなく、柔らかいものにぎゅっと抱きしめられていた。」
「………………………………」
「目を開いた時、そこには微笑む姉さんの顔があった。いつの間にか男は倒れ……呆然としたレーヴェがいた。レーヴェに支えられた姉さんはハーモニカを僕に渡して……そしてゆっくりと目を閉じた。」
「………………………………」
ヨシュアの話をさらに聞いたエステルは辛そうな表情になった。
「……よく覚えているだろう?でも、こんな風に話してても僕はあんまり哀しくないんだ。他人の日記を読んでいるような……そんな不思議な違和感しかない。そしてそれは……君と一緒にいる時も同じだった。」
「………え………………」
そして唐突に自分の事を出されたエステルは呆けた声を出した。
「君の暖かさに触れて確かに僕は変われたと思う。君
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