3部分:第三章
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第三章
その妻にもだ。実際に言われてしまった。
「口臭酷いわよ」
「そうか」
「そうよ。だから歯磨き粉使ったら?」
彼女は具体的に話した。
「口臭予防にもなるし」
「しかしな。身体に悪いしな」
「どうかしら。歯磨き粉使わない方が身体に悪いんじゃないの?」
「それはないだろ。やっぱり」
「そうだといいけれどね」
妻の言葉は冷めたものだった。
「本当に」
「だから。歯磨き粉はさ」
「学者さんが言っていたのね」
「だから間違いないよ」
学者の権威を盾にした言葉だった。
「それはね」
「どうかしら、本当に」
「問題ないって」
彼はあくまでそう信じていた。しかしであった。
遂にだ。彼は虫歯になってしまった。それもかなり酷い。
「歯医者行って来て」
妻の言葉は冷たいものだった。視線もだ。
「すぐにね」
「冷たくないかい?随分」
「あなたの為を思って言ってるのよ」
しかし妻はこう言うのだった。
「だから。歯は健康の元でしょ」
「うん」
「歯が悪かったら他の部分も悪くなる」
夫の言葉をそのまま言ってみせたのである。まさにブーメランだ。
「だからよ。すぐに行って来て」
「わかったよ、それじゃあ」
こうして妻に背中を押されて歯医者に行った。そうして口を開いて歯を見せるとだった。いきなりこんなことを言われたのだった。
「うわ、これは酷い」
「酷いですか」
「歯がぼろぼろですよ」
歯医者はマスクの奥から顰めさせた声で告げてきた。
「虫歯が酷くて」
「そんなにですか」
「まあ治療できますけれどね」
それはできるという。
「しかし詰め物を結構しないといけないですね」
「そうですか」
そう言われて落胆した秀吉だった。
「そこまでなんですか」
「はい、それでなんですが」
「それで?」
「歯磨きはちゃんとしてましたか?」
歯医者もまたこう問うのである。
「それは」
「していましたけれど」
「いや、歯がかなり汚いですから」
こう言うのだった。
「口臭も酷いですし」
「すいません」
「歯磨き粉とか使ってます?」
そして歯医者はだ。このことを尋ねてきた。
「それはどうですか?」
「えっ、それは」
「若しかして使ってないですか?」
歯医者の言葉が怪訝なものになった。
「まさかと思いますけれど」
「それってまずいですか」
「かなりまずいですね。最低でも塩でも使わないと」
「けれどあの雑誌で、ですね」
秀吉はまず雑誌から話を出した。
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