第80話
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俺たちは―――その地獄の中を必死に逃げた。家族とみんなの断末魔を聞きながら『逃げろ!』という声に押されてただひたすらに村外れを目指した。そして、村外れに出たところで俺は追っ手を攪乱することにした。すぐに追いつくと言い聞かせてカリンとヨシュアを先に行かせた。」
―――青年は女性と少年を逃がす為、一人戦い続けた。女性達が逃げ切ると信じて……―――
「だが……襲撃者たちは想像以上に用意周到だった。逃げた村人を始末する者を待機させていた。」
―――青年が追いついたその時―――
「俺が追い付いた時、その場は奇妙に静かだった。喉を撃ち抜かれた男の死体……。銃を握って呆然とするヨシュア……。肩から背中を切り裂かれながらヨシュアを抱き締めるカリン……。カリンは……まだ辛うじて息が残っていた。」
―――青年は血相を変えて女性に駆け寄り、声をかけた。すると女性は瀕死の傷を負っているにも関わらず、穏やかで満ち足りた笑顔を浮かべ、青年を見つめた―――
「なぜかカリンは……穏やかで満ち足りた表情を浮かべていた。愛用のハーモニカをヨシュアに託し、ヨシュアのことを俺に頼んで……。そして―――静かに逝った。」
「………………………………。……なん……で……。どうして……そんな事が……」
レーヴェの話を聞き終えたエステルは信じられない表情で呟いた。
「帝国軍がリベールに侵攻したのはその直後のことだ。王国製の導力銃を携えた襲撃者によって起こされた国境付近での惨劇……。それは侵略戦争を始めるにはあまりにも格好の口実だった。」
「……そんな……。本当にリベールの兵隊が……?」
レーヴェの話を聞いたエステルは信じられない表情で尋ねた。
「軍に保護された俺たちは最初そのように聞かされていた。だが数ヶ月後……帝国軍の敗退で戦争が終わった時、俺たちはまったく別の説明を受けた。村を襲った者たちは猟兵団くずれの野盗たちだったと。そして、決して襲撃のことを口外しないように俺たちを脅して……。軍は、土砂崩れが起きたと発表し、ハーメルに至る道を完全に封鎖した。」
「ちょ、ちょっと待って!?なんでわざわざ嘘をつく必要があるわけ?それじゃあまるで……」
レーヴェの説明を聞いたエステルは血相を変えて尋ねた。
「クク……。全ては帝国内の主戦派が企てたリベールを侵略するためのシナリオだったというわけだ。戦争末期、その事が露見し、帝国政府は慌てふためいたという。当時、メンフィルが現れた影響で帝国軍はなすすべなく敗戦続きの上、そのような事実がわかってしまったら、リベール、そしてリベールと同盟を組んだメンフィルに帝国を攻める口実を与え、”エレボニア”と
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