第三話 忘れられた遺跡と傭兵の少女
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あった。
「……っ!」
ヨロヨロと進んでいたライドの足が突然止まり、直ぐに付近の横道に逸れて息を潜める。
すると、先程までライドが進もうとしていた場所に一体の不死者が通り過ぎていく所だった。
「……くそぅ……奴ら完全に魔力の一番濃い場所を中心に動いてるみたいだ……」
魔力の一番濃い場所。
つまり、この遺跡で言えば出入り口に当たる場所である。
要するに、元々この鉱脈は地面により近い場所に魔力の吹き出し口があり、さほど苦労しなくても魔石の採取が出来る非常に珍しい場所だったようだ。
それを、魔石を求めてどんどん掘り進めてこれ程までに大きな坑道を作り上げてしまったのだから、当時の人間の無知による賜物だと言えなくもないが、文明の利器なんてものはいつの時代でもそんなものなのだろう。
それはともかく、今のままではとても出口を抜ける事など出来そうもない。
横道から僅かに顔を出し、どうしようかとライドは考える。
嫌に成る程歩き回って、ライドが分かった事は2つ。
1つはどうやらこの坑道の出入り口は現在不死者が徘徊している目と鼻の先にある大穴と、自分が落ちてきた小さな穴の2つだけだという事。
最も、小さな穴の方は落ちる事は出来ても登る事は出来ないのは既に試して実証済みだ。
2つ目はどうやらこの遺跡に存在する不死者は合計3体いるらしいという事だ。
ちなみに、現在ライドの視界にいる不死者は1体。逃げるならば今がチャンスと言えなくもないが……。
「戦闘経験も殆どない細腕に、武器は今にも折れそうなつるはし一本。足はガタガタで走れない。そんな男が不死者をすり抜けて出口を抜ける? はは。それこそ奇跡でも起きない限り無理だよ」
泣きそうな顔で不死者を見ながら自嘲気味に呟くライド。
既に心が折れてしまったのか、その声には全く力がない。
そんなライドの感情に釣られたのか、先程まで1体だった不死者の傍に、近づくもう1体の動く者の姿をライドの双眸が確認した。
「……いよいよ終わりかな。2体の不死者が集まったら…………不死者?」
一度は諦めた筈だった。
しかし、諦め死に体だったライドの糸目が嘗てない程に見開かれる。
よく確認できる程に晒された蒼い二つの瞳の先にいたのはしっかりした足取りをした若い女だった。いや、白く塗られたレザーアーマーを着込んだ姿からそれなりの年齢に見えるだけで、ひょっとしたらライドとそう歳の変わらない少女かもしれない。
右手には見た事もない奇妙な形をした剣──恐らく魔道具だろう──を持ち、左手には少女の腕の長さほどのブロードソードを下げている。
肩口までの長さはあるであろう銀髪は後ろで縛って一つにしており、動物の尻尾のようにも見える。
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