第一話 せめてあっさり転生させてくれ
[1/3]
前書き [1]次 最後 [2]次話
それは、ある夏の日のこと。
高校二年生の俺は毎日の日課を終え、いつもと同じように眠りについた。
だが、その日の眠りはいつもの夢も見ない、時々若い健康な男子にふさわしい夢を見る健康的な眠りとは違っていた。
気がつくと、俺は赤と黄色、金色で飾り立てられた大昔のオーディションバラエティーのスタジオのような場所に倒れていて、直立した二頭のハスキー犬を従えた男が俺を見下ろしていた。
「目覚めよ、──よ」
俺は死んだのだろうか。それとも夢か。真夏の夜の夢か。そう思っていると、見慣れない顔──星を散らした赤いシルクハットをかぶりタキシードを着てアームチェアに座った男は偉そうにふんぞりかえって名乗った。
「目覚めよ、──よ。私は『パスカル法則の伝説』、この次元の者たちの運命を司る神のひとり」
『神って柄じゃないと思うのは気のせいだろうか』
誰が神だ。ただのSS書きのおっさんじゃないか。
ネットの小説サイトを一通り読んでいる俺はおっさんの名乗った名前に聞き覚えがあった。
No-velや曙に分かる奴にしか分からないネタを満載した、趣味とこだわりに走った作品をあれこれ書いている作者である。硬め古めの作風は一番分かりやすい作品でもラノベぐらいしか読書経験値のない俺にはついていけない代物だ。
そんなことを考えていると思考を読まれたのだろうか。
気に障ったのかあからさまに不機嫌になったパスカルは黒いボストンフレームの眼鏡をクイクイとやりながら豪華なエングレーブのあるアームチェアから飛び降り、俺の倒れている場所まで一気に詰め寄るとばかでかい声でまくし立てた。
「誰が鬼のような作者だ神というより悪魔だ外道ナンバー1だって?まあいい。この次元の住人に対しておいて私が力を行使しうることには変わりないのだからな。お前にはこれから、26世紀か21世紀か別の世界に転生してもらう予定だったが、気が変わった。ろくでもない世界にろくでもない存在として飛ばしてくれる」
「すいません私が悪うございました」
誰もそんなこと言ってねえよ、と言いたいところだったが100ギガトンと大書きされたハンマーを振り上げて言われては、反論する気分は一瞬で消え失せた。こだわりの作品大好きなこの作者のことである。蟻の巣の中の蟻の一日でも海中を漂うゲル状生物の一生でも思いつけば需要が全くなくても平気で書きそうだ。いかにも痛そうなこんぺいとうハンマーで叩き潰されたあげくそんな物語の主人公だか主人公に食われる変な虫だかプランクトンだかに転生させられてはたまったもんじゃない。俺は一秒フラットで反抗的な表情を消すとおもいっきり頭を下げた。いわゆるジャンピング土下座という奴である。
だが、すっかり機嫌を悪くしてしまったパスカルはうむうむと頷きつつも、ろくでもない世界にろくでもな
前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ