110章 信也と竜太郎たち、吉本隆明を語り合う
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を大切に思う心だと思うわ」
ふんわりしたロブのヘアスタイルの、奈緒美もそう言って、ほほえんだ。
「おれも、まったく、共感しますよ、しんちゃん。それにしても、吉本さんは、脳や心には、
詩的なものや芸術的なものが不可欠だということを証明するために、
たくさんの論考とかを書いて、知的な格闘をし続けたんだよね。
でも、だからって、詩や芸術をやっている人を、特権階級とかって、
特別扱いするんじゃないわけですよね」
「そうなんですよね、竜さん。むしろ、吉本さんは、特権階級や権力とか権威とかを、
自由を阻むシステムや制度や幻想として、解体しなければと考えていましたからね。
そんな意味では、場合によっては、≪知識も悪だ≫って吉本さんは言ってますよ。
あっははは。
そんな思索の結果が、≪アフリカ的段階≫という考え方なんでしょうね。
≪アフリカ的段階≫という考え方は、人類の文明や精神の歴史を、
どこまで掘り下げることができるかが問われている、として生まれたんですよね。
そんな、国家もない、原始的な、アフリカ的段階な社会にとっても、鍵を握るのは、
人間の脳=心の本質であるところの、詩的構造以外の何物でもない、
と、中沢さんの『吉本隆明の経済学』に書いてます。
なんか、難しいお話して、すみませんね、みなさん。
あっははは。もうちょっと続けますと、
『吉本隆明の経済学』にはこんなことも書かれています。
・・・言語も経済も、マルクスの言う意味での≪交通≫であって、
少なく見積もっても、数万年の間、人間の脳=心が生み出した、って中沢さんは書いてます。
・・・その脳=心は、初め、詩的構造として生まれ、そののちも、
この構造を深層に保ち続けてきた、と。
・・・吉本さんは、その根源的な詩的構造の場所に立ち続けることによって、
稀有な思想家になった、と。
・・・そして、その≪詩人性≫は吉本さんの思想の揺るぎいない土台であった、と。
まあ、そんなことを中沢さんは述べています。
・・・おれは、これまで、吉本さんの思想が、巨大で、偉大で、大きすぎるので、
よくわからなかったのですが、かなり理解できた気持ちになりました。あっははは」
「なるほど、そういう事情で、吉本さんも、『芸術言語論』には、思い入れが強かったんですね」
竜太郎がそう言う。
「そうなんです。吉本さんは、『貧困と思想』という著書の中では、こんなことを言ってます。
≪芸術という概念、(吉本さんの場合は文学ですが、)それを普遍化してゆけば、
政治問題も経済問題も同じように解けるのだと考えているわけです≫って」
信也はそう言った。
「なるほ
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