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真・恋姫†無双 劉ヨウ伝
第176話 荊州の新たな主 後編
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す!」

 焔耶は正宗に元気良く返事した。



 正宗は紗耶夏の案内で彼女の邸宅に向けて移動した。この移動には正宗麾下の歩兵中心の兵三千を連れていた。部隊の主将は泉(満寵)、副将に宗寿(蔡平)がそれぞれ任命された。供回りとして、伊斗香(?越)と秋佳(張允)、そして焔耶を伴った。

「この辺りはあまり戦火の被害が少ないようだな」

 正宗は広がる田園風景を見ながら紗耶夏に声をかけた。緑色の稲が勢いよく生えて辺り一面、気持ちのいい景色だった。正宗も表情が晴れていた。正宗は馬を止め、周囲を見渡した。

「はい。賊による被害は多少はありましたが、我が黄家は蔡一族とは姻戚関係にございましたので、それに家の者達を警邏として配しておりました」

 紗耶夏は一瞬言いづらそうな口調になるものの、正宗に説明した。紗耶夏の手配は豪商にして有力な豪族の手腕と頷けた。打てる手は出来うる限り打っておく。財力があるからできることだろう。ひどい地域だと、兵士達が難癖をつけて略奪を行ったり、違法な徴発を行っていたと正宗は報告を受けていた。正宗は対策として、現行犯である場合、その場で処刑することを軍規として定め実行させていた。他軍であっても、この地の軍の最高責任者は正宗である。自軍の兵士達と同じ軍規を適用して処刑していた。処刑した者達の首は見せしめのために街や街道に晒した。この行為は一定の抑止効果となっていた。

「紗耶夏、もう済んだことだ。お前が気負うことではない。私はお前の賢明な判断を評価している」

 正宗は紗耶夏に視線を向け、彼女に声をかけた。紗耶夏は正宗に黙礼した。

「正宗様、私は決断しましたが、恥かしながら私の考えではございません」

 紗耶夏は視線を正面に向け話し出した。

「ほう。知恵を授けたのは慈黄(鳳徳公)か?」

 正宗は紗耶夏の話に興味深そうに聞いた。紗耶夏はかぶりを振ると、正宗から視線を外し正面をいた。その瞳は過去を回想したのか哀しみを感じさせた。

「私の息子の意見です」

 正宗は驚きに表情を変えた。彼にとって予想外の名だったのだろう。

「お前の息子というと、黄月英がか?」
「はい」

 紗耶夏は短く返事した。

「私は正宗様は信じ切ることが出来ませんでした。恭順の意を示しても、その後、夫と息子を処断されるのではと不安でございまいした。ですが、何もせずにはいられず、出来うる限りの兵糧をかき集め、それを恭順の証としてお納めいたしました」

 紗耶夏は当時のことを思い出すようにゆっくりと語った。正宗は黙って聞いていた。

「その時、息子は私に申しました。逆賊の血筋は三族皆殺しだと。助命を得るには徹底した恭順の意思を示すしかないと。正宗様は慈悲深い方だと風の便りで聞いております。その
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