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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 13
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られない。
 てっきり有無を言わせぬ勢いで着席させられるかと思っていたミートリッテは、思わず彼の額に右手のひらを押し当て、金色の虹彩を覗き込んでしまった。
 「ミートリッテさん?」
 驚くアーレストの声にも退かず、自分の額にも反対の手を当ててみる。
 「熱は無し、かな。けど、風邪を引きかけてるのかも。風に当たりすぎないほうが良いですよ。王都ではどうか知りませんけど、ネアウィックでは基礎体力で勝負が基本なんです。薬はありますが、お医者様は期待しないでくださいね。どうぞお大事に。では、お邪魔してきます」
 海岸で拾われた時はハウィスに看病してもらったなぁ、などと思い出を振り返りながら、小刻みに瞬きを繰り返すアーレストへ にこっと笑って一礼し、背を向けた。

 だから、ミートリッテは知らない。
 彼が、あの時と同じ……悲しげな微笑みを浮かべて俯いた事を。


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