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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 13
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近海組の漁船が停泊してるのも確認したし、見るからに見張りです! と主張する格好の自警団員もそこかしこでちらほら見えた。

(立ち位置の指定まではされてない? それとも巡回中? どっちでも良いけど、今はまだ見つけないでね……本当、お願いだから)

 自らの職務に勤しんでいる善良な自警団員には不適当なことを心の底から祈り、ついでに、船ごとどこかに隠れてる海賊にも
(見つかるんじゃないわよ、くそったれのバカ男共!)
 と罵倒し、教会へと続く長い坂道を上る。
 その途中。

「ミートリッテ!」
「げ。ヴェルディッヒ?」

 教会から歩いてきたらしい、現在三番目くらいで接触したくない幼馴染に声をかけられ、咄嗟に逃げ出しそうになった。

「げって何だよ。朝一から失礼な!」
「ああ〜……ごめん。なんでもないわ。気にしないで。それより、自警団の仕事はどうしたの? 持ち場を離れてて良いの? あ、さてはサボりか? この、給料泥棒め!」
「……お前、感じ悪くないか?」

 お怒りごもっとも。
 ミートリッテも、海賊が絡んでさえいなければ、こんな態度は取らない。
 しかし、自警団員と話し込むのは状況が許してくれないのだ。
 つっけんどんになるのも仕方ない。

「残念ながら、今も仕事中だ。俺は巡回がてら村のみんなに警戒を促す係。ハウィスさんに聴いてるだろ? 村の近辺に危険な集団が潜んでるって話」
「ええ。……あれ、どうして詳細を伏せてるの? 個々の身体的特徴とか、集団が国境を越えて侵入してきた目的とか、あらかじめ教えておいたほうがいざって時に誘導しやすいし、みんなも逃げやすくなるでしょうに」

 ミートリッテの疑問に、ヴェルディッヒは両肩を軽く持ち上げて答えた。

「目的はともかく容姿や特徴を村のみんなにまで知られたら、奴らが潜伏を続ける理由を失うからだ。せっかく虐殺行為無しで隠れてくれてるんだし、被害を出さずに済むなら、そのほうが両国的にもありがたい。俺達が詳細を表に出さないと明言した上で警戒体勢を整えてるのは、
『詳細は教えてないから、みんなには手を出すな』
『手を出すなら両国の軍が容赦しない』って、奴らに向けた暗号なんだよ。
 現状維持、あるいは即刻退けって意味さ」

(お前達が村の近辺に潜んでいるのは判っている。ここで悪さをするなら、アルスエルナとバーデルが協力して叩き潰すから覚悟しろ、か。うーん?)

「それさ、露骨にアルスエルナ王国とバーデル王国の協力体勢が整うまでの時間稼ぎだよね? 虐殺行為をするような人間が大人しく聞き入れてくれるとは思えないんだけど。逆に「やれるもんならやってみろ」って、潜むのをやめて襲ってきたりしない?」
「…………」

(え。ちょっと? 何故ここで黙る? 気まずそうに目を
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