閑話―恋―
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き抜いた。
料理人の顔色で毒を看破し、追従していた猪々子と斗詩に女中を取り押さえさせ、丸裸で対峙せざるを得なかった湯浴みでは、身体を幾度か斬られながらも致命傷を避け、刺客を組み伏せその頭を湯船に沈め――……。
観察眼、懐刀、機転、上記の苦い過去が今の袁紹の武技を形作った。
不意を打って来る刺客を相手に、正面から武で挑む事は出来ない。袁紹は常に周りにある物と、状況を利用して切り抜けてきたのだ。
彼の言う“覚悟”の真意を突き詰めれば、生き残る為に嫌悪して止まない戦い方を受け入れる事でもあった。
「……」
恋の胸の中に熱い何かが宿る。
袁紹はその見た目と言動に反して、色々な物を抱えている。
それは責任感だったり名族としての自負だったりと、多種多様だ。
恋が見てきた今までの彼は、周りに悩みや不満を洩らす事無く眩い道標として在り続けた。
恐らく余計な心配をかけまいとする、彼なりの心配りだろう。
温かいと思うと同時に、もっと頼って欲しいと不満にも思う。
袁紹としては、これ以上無いくらいに周りを頼っているつもりだ。
武に関しても、知に関しても、皆の助けで今の勢力があると自覚している。
しかし、彼の願いはどれも南皮と民に対するものであり、自分自身に使うことは無かった。
そんな袁紹が胸中をさらけ出している、紛れも無い信頼の証。
彼が―――堪らなく愛おしかった。
「大丈夫、恋が護る」
「む、恋が刺客を退けてくれるのか?」
意図を解した袁紹の返事に嬉しそうに頷く。
「フハハ! 刺客が気の毒であるな、我も枕を高くして眠れると言うものだ!!」
袁紹は自分を安心させる方便と解釈し――……
恋の瞳に宿る熱を見逃した。
――どうしてこうなった!?
場所を移って袁紹の寝所、寝台の上には恋が抱きつく様な形で添い寝していた。
鍛練を終えた袁紹は軽く湯浴みで汗を流し、自室に戻ろうとしたのだが――何故か恋が追従してくる。
とりあえず解散しようという提案を聞かず、そのまま袁紹の部屋に到着。
寝台で横になる袁紹を何故か見続けていた。訳を聞くと、護衛としての役目を果たすとの事。
まさか夜通し、それも部屋の中に入ってまで護衛してくれるとは考えていなかった袁紹。
明日からで――と言った説得にも首を横に振られ、仕方なく寝台を譲ろうとしたがそれを拒否。
袁紹が名族として、女性を床に寝させないのであれば。
恋は家臣として、主の寝具を奪う訳にはいかない。
堂々巡りのやり取りの末、二人で寝台を共にする事で妥協しあった。
――どうしてこうなった!?
そこで話は現在へと戻る。
恋は寝惚けているのか、袁
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